異なる事業を関わる組織で、メンバーの報酬水準をどのように設定するか。
非常に悩ましいテーマですが、こういうときこそ、シンプルかつオープンに物事を整理していくことが大切です。
ポイントを絞って考えてみました。
オープンに議論する
迷いが生じるテーマこそ、オープンに議論するべきです。
シンプルに議題をまとめ、ロジカルに整理する。
最後は、エイヤーで決める部分もありますが、そこまでオープンにやりましょう。
報酬水準は、外部(採用市場)と内部(自社基準)に基づく
報酬水準は外部と内部を総合して決定します。
内部は、わかりやすく言えば「AさんよりBさんの方が貢献している」といった観点。
外部は、「この方は、いくら(何百万)でオファーされる」という観点。
外部からのオファー額は、職種と職責に応じて相場が決まっており、それを大きく外れることはありません。
人材採用の過渡期で、相場がグッと上がるタイミングがありますが、イレギュラー扱いで問題ないです。
この前提をきちんと理解した上で、現場事業の報酬水準を相場よりも平均的に高めに設定することが必要です。
同じレベルの仕事をしていたら、同額もしくはそれ以上の報酬水準を目指します。
「人件費で調整できる」と考えるのは、時代遅れの経営。
これだけ働き手がいない世の中なので。
職種を、新たに創る
業界のリーダーになっていくために、自分たちで「職種」を創造することが求められます。
時間的・空間的に同じ仕事をして、同じ価値を提供しているようでは、報酬水準は上がりません。
顧客のニーズを見つけ出し、その価値を提供するための仕事とそのプロセス、技術を新たにつくることが求められます。
また、これまでの延長線の仕組みとして、社内異動の整備も大切。
現場事業からSaaS事業への異動やその逆も有り。
経験や実力に応じて、報酬水準が下がる可能性もある前提で、フェアに待遇を決めます。
現場事業の利益を、SaaS事業に過剰投資しない
現場事業の利益は、現場に投資すべきだと考えています。
あとは実績を踏まえた上での借り入れで。
経営のシナジーを考えると、他事業への投資もありますが、現場の気持ちを考えると一体感を形成しにくい。
ましてや、人件費が削られているようなことがあれば、納得は得られず、経営への信頼が揺らぎます。
ここで「ビジョン」などと絵空事で組織を束ねてはいけません。
「ビジョン」は、もっと大切にすべき概念です。
ここで使ってはいけません。
と考えた場合、SaaS事業に関して可能な限り、外部資金を調達し、利害関係者とのネットワークも交えながら急成長を狙います。
スタートアップは、成長ではなく、急成長を狙う組織です。
そして、両軸で業績に見通しが立ち、利益が出てきたタイミングで、全社業績連動賞与のようなインセンティブを設計し、報酬制度に反映させていきます。
小さい規模で業績連動をやっても効果は薄く、「これだけ?」といった期待外れの施策になります。
やるなら盛大にやらないと意味がありません。
報酬を出す側(経営者)としたら、「追加でボーナス出せるだけ(ありがたいと思ってほしい)」と思いますが、そんな気持ちはメンバーには伝わりません。
自分(経営者)がその立場にいれば、もっと強く思うことでしょう。
最後は、質を上げて、単価を上げていくしかない
長期的に見通すこととして、質を上げて、単価を上げる。
これ以外考える必要はない、と言い切ってもいいぐらい。
最初から、無意識のバイアスで「できること」と「できないこと」を割って考えてしまうため、この品質と単価のアップが進行しない。
そして品質には、あらゆる経営プロセスが入ってくることにも注意が必要。
QCDはもちろん、S(スコープ)も入ってくる。
Sを改善することで、「あればいいけど、絶対に必要というわけではない」という本質的には無駄を削減することで、品質向上を目指す。
とにかく単価。
成長企業は、気がついたら10年か20年で単価が倍になっているはず。
「昔はもっと安かったのに」と思う企業ほど、成長している。
「もっと安くなった」という企業は、成長していない。
インフレを言い訳にしてはいけない。