等級制度で昇格を設計する際、定義された等級要件をすべて求めるか、一部の強みだけでも昇格を認めるか、は議論のポイントになります。
私が設計する際、ほぼ「すべてを求める」です。
改めて考えると、不可逆性の高い設計なので、自分が保守的になっているかも、という気づきです。
昇格するには等級要件をすべて求める
自社の求める人材を階層別に定義した等級要件。
能力やリーダーシップ、バリューといった複数の項目で設計することがあります。
例えば、1等級から2等級に昇格する際、能力とバリューは2等級の要件を満たしているけど、リーダーシップには不足があるという場合、昇格するかしないか。
私は「昇格するには等級要件をすべて求める」というルールのもと、「昇格しない」となります。
リーダーシップが2等級の水準に達したら、昇格します。
イレギュラーかもしれませんが、能力が3等級、バリューは2等級、リーダーシップが1等級であれば、1等級となります。
要するに、「下」を基準に昇格を判定します。
もし「上」を基準に昇格判定する場合、先ほどの例では3等級です。
リーダーシップが1等級、バリューが2等級であっても、能力が3等級なので最も上の能力を基準に昇格させます。
「平均」で昇格判定する場合、2等級です。
この3つの方法、「下」か、「上」か、「平均」か、はメンバーからよく受ける質問でもあります。
「尖った人材が評価されないのでは?」「強みを活かした方がいいのでは?」という意見が出ます
昇格にすべての等級要件を求めるという設計にした場合、「尖った人材が評価されないのでは?」、「強みを活かした方がいいのでは?」という意見が出ます。
具体的には「とてつもない技術力があるけど、コミュニケーション能力が低いと昇格できない(会社として評価されない)のでは?」といった話です。
個人的には「飛躍しているかも」と思いながらも、「確かに」と感じるところもあり、難しいなと。
ただ、自分の中では、等級要件はかなり絞り込んでシンプルに設計しているので、言語化された等級要件はすべて求めたいな~と思っています。
項目が8とか10とかあるのであれば、すべてを求めることによる弊害が起きるかもしれませんが、3や4ぐらいであれば、だいぶ選りすぐられた要件なので、すべてを求めたとしても尖った人材が昇格できないってこともないだろうし、強みが活かされないってこともないのでは?と思っています。
強みを活かすことには賛成ですが、弱みを放置していいとは思っていません。
期待したいことが弱みになっていたら、きちんと改善すべきです。
これまでの設計を振り返ると、昇格にすべての等級要件を求めることが多いのでは、実際に尖った人材が評価されない・強みを活かすことができていないといった問題は見聞きしていません。
不可逆性が高いので、保守的になっているかも
最近、改めて考える機会があったのですが、「昇格にすべての等級要件を求める」を提案する背景には不可逆性もあるなと。
もし、「一部の等級要件でも満たしていれば昇格できる」制度にして、問題があったら「昇格にすべての等級要件を求める」に変更するとなると、不利益変更の可能性が高いことが想定されます。
このことを考えると、まずは「一部の等級要件でも満たしていれば昇格できる」をやってみよう、とはなりにくいです。
また、本論とはズレますが、個人の等級を公開する場合、一部の等級要件で昇格を認めてしまうと、「なんであの人が、あの等級なの?」という人事制度に対する不満や不信につながってしまう懸念もあります。
ただ、人事制度が適用されるメンバーからすれば、「一部の等級要件でも満たしていれば昇格できる」方が自分の給料を上げやすい仕組みになるので、こちらを望みます。
で、「昇格にすべての等級要件を求める」というルールであることを知ると、モヤモヤというか、納得感につながりにくいことも事実。
でも、設計する立場からすると・・・
考えていて気づいたのですが、どこまで不可逆なのか、一度やってみるのもいいかもという話です。
制度変更や不利益変更の可能性も伝えておきます。
もちろん、事前に聞いていても意見は出てくるかもしれませんが、それはしょうがない。
リスクを承知した上でチャレンジしてみる。
そして、振り返ることがスタートアップの現場で使える実践知になります。
よしなにやってみようと思います。