スタートアップの方々にとって、どのような懲戒が現実的に起きているのか、見当もつかないと思います。
大企業での人事経験があれば、別かもしれませんが。
そこで、労政時報の「懲戒制度」の特集で取り上げられているケースを、そのまま引用してみました。
「こんなことが起きるのか」と知ってもおくだけでも、実際に起きたときの心理的な負担が変わるかもしれません。
出典は、労務行政研究所の『労政時報4062号』です。
懲戒制度の最新実態
<調査要領>
◎調査名「懲戒制度に関する実態調査」
1.調査対象:全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3794社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上。一部「資本金5億円以上または従業員500人以上」を含む)1600社の合計5394社。ただし、持ち株会社も場合は、主要子会社を対象としたところもある。
2.調査時期:2023年4月10日~7月5日
3.集計対象:前記調査対象のうち、回答のあった225社
※補足:集計対象225社のうち、1000人以上は65社、300~999人は83社、300人未満は77社です
「図表24 ケース別に見た被懲戒者に対する懲戒処分(複数回答)」として取り上げられているケースを、懲戒処分別に整理して引用しました。
労政時報側で仮定したケースを、過去事例等からどのような懲戒処分に該当するのか、を判断して回答していただいた調査内容です。
※本調査の集計社数は、ほぼ多くのケースで195-197社となっています。
懲戒解雇
- 売上金100万円を使い込んだ
- 取引先から個人的に謝礼金を受領した
- 業務に重大な支障を来すような経歴詐称があった
- 終業後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された
- 営業外勤者が業務中に自動車で通行人をはねて死亡させ、本人の過失100%であった
- 無断欠勤が2週間に及んだ
- 社員割引で購入した商品や無断で持ち帰った会社の備品をネットで販売し、利益を得ていた
- サーバーに保存されている重要なデータやプログラムを改ざんした
- 社外秘の重要機密事項を意図的に漏えいさせた
- 反社会的勢力との交友が発覚した
- 社内で私的な理由から同僚に暴力を振るい、全治10日の傷を負わせた
- 満員電車で痴漢行為をして鉄道警察に捕まり、本人も認めた
降格・降職
- 部下に対してたびたび暴言を吐くなど、パワハラを続けていた
- メールやチャット等で同僚にわいせつな内容を送るなど、セクハラ行為が発覚した
- 妊娠した社員に対し、上司が解雇を示唆したり、「育休を取るなんて迷惑だ」などと発言し、嫌がらせをしたりした(マタハラ行為)
出勤停止
- 同僚に対してストーカー行為を繰り返したため、被害を訴えられた
減給
- 出張の経費を不正に上積みして請求していた
- テレワーク中に内緒で副業を行い、本来の業務に支障を来した
戒告・譴責
- 同僚の売上金の流用を知りながら、報告しなかった
- 社用車を無断でしばしば私用に使っていた
- 車を運転して営業中に得意先から携帯電話の着信があり、話に熱中して事故を起こした
- 会社所有のパソコンや携帯電話を紛失した
- 病気と偽って私傷病休暇・休職制度を悪用し、海外旅行した
- 会社が認めていない自転車通勤により、定期代を不正に受給していた
- テレワーク中に何度も中抜けしているにもかかわらず、それを申告していなかった
- 社外持ち出し禁止のデータを独断で自宅に持ち帰っていた
- 就業時間中、個人のアカウントを使用して、日常的にSNSに投稿していた
- SNS上で会社や上司・同僚を中傷していた
- 終業後、社外で酒に酔って見ず知らずの他人とけんかをし、警察沙汰になった
処分の対象とはしない
- クレジットカードによる買物のし過ぎで自己破産手続きの開始決定を受けた
小さいことから大きなことまで、幅広くあります。
倫理的な問題から、それ以上のことまで。
こうした問題に対して、会社(経営者・経営陣)が下す判断が、組織に大きな影響を及ぼします。
もちろん就業規則で規定されていれば判断の余地はありませんが、個別事情があったり、情報が揃っていなかったり、状況は様々です。
判断を間違えれば、メンバーの気持ちが離れていくかもしれません。
また、同じ問題を誘発してしまう原因にもなってしまう可能性も。
機会は少ないですが、会社を揺るがす意思決定になるため、経営者の個人的な感情と価値観だけで判断するのではなく、経営チームで喧々諤々と議論することが必要です。
自分は、こういう場面で比較的厳しいスタンスで臨みます。
それだけ周囲に与える影響が大きいと考えているからです。
基本は、事象が起きてから検討することになると思いますが、どんなことが起き得るのかを知っておくだけでも、効果はあると考えています。