スタートアップに限らず、組織は機能別組織(職能別)から始まり、事業部制組織へと変化します。
問題になるのは、事業部組織のマネージャーが相手の専門性を評価できない場合の対応。
具体的には、エンジニアやデザイナーといった専門職を、事業部の長が評価できない、もしくは被評価者からしてその評価体制に納得感を得られない場合の対応です。
マトリクス組織によるピープルマネジメント
縦軸に事業、横軸を機能を配置してマトリクス組織にすることで、対応する場合があります。
ツーボス(two-boss)システムと言われるように、マネージャーが二人になるため、優先順位を決めておく必要があります。
「適宜話し合って決めましょう」と言って、現場が困るケースが多くあります。
話し合った先にどう決めるか、を既定しているのが組織におけるヒエラルキーであり、ツーボスは根本的に難しいのです。
しかし、現場の納得感を考えるとマトリクス化した方が良さそう、と事業推進の観点ではなく、ヒトの気持ちを慮って意思決定されることがあります。
マトリクス化した場合の副作用を整理し、事前に共有した上で対応策を練っておくことが必要です。
副作用
- 専門職メンバーがそれぞれ配置される「事業」に対して、機能軸のマネージャーが理解を深めないといけない
- 機能軸のマネージャーに各「事業」を説明するコストがかかる(実質的に、事業軸のマネージャーに負担が生じる)
- 機能軸のマネージャーが、各被評価者のアウトプット・アウトカムを、日々の一緒に仕事をしていない中で把握・理解し、評価・フィードバックすることに負担がかかる
- 事業軸のマネージャーは、評価や報酬決定の責任(権限)がない中で専門職メンバーをマネジメントしないといけない(想像以上に難しい)
- 目的や目標が変わった場合、事業軸のマネージャーは、機能軸のマネージャーに依頼して、被評価者本人の目標を変更しなければならない。このプロセスに機能軸のマネージャーの思惑(利害)が影響する
- 事業軸と機能軸で思惑に差が生じた場合、その上長である管掌責任者が意思決定しなければならない(事業部制の狙いである各事業部でのスピーディな意思決定に影響が出る)
- 機能軸のマネージャー自身が、特定の事業軸のメンバーとしてアサインされる場合、マネージャーとメンバーのそれぞれのミッションを追うことになる(おそらくどちらかがおぼつかない)
- コミュニケーションや意思決定のプロセスが全般的に複雑化するので、組織が内向きになる(外向きにしようと事業部制にしたのだが)
目的に立ち返って考える
組織を変えた目的に立ち返ると、機能ではなく、事業へヒト・組織を方向付けることでした。
しかし、専門職は、マネジメントの権限視点で見ると、機能に方向付けられることになります。
機能が、すべての事業を理解し、事業軸のマネージャーと同じ視座・視点でマネジメントできるのであれば問題ありませんが、そもそもそれであれば組織を変える必要はありません。
組織を変えるというのは、痛みを伴うものです。
その痛みが、これまで解決できなかった問題を取り除いてくれると考えています。
この痛みから逃げてしまうと、そもそもの目的を果たせないかもしれません。
プランAは機能別、プランBは事業部別、プランCをマトリクスとするか、事業部別の中でやりくりできる体制を構築するか。
やりくりできる体制をつくってから組織改編に着手するには時間が足りません。
だから痛みが伴う。
また、その痛みとは何か。
その痛みを避ける本質的な理由は何か。
その上で、経営が意思決定します。