「ハイレイヤー専門職人材のみ、職種別等級要件をつくる」というオプション

人事制度設計の肝となる等級要件の設計。

スタートアップで初めて人事制度を導入する際の推奨は、全職種共通の等級要件を設計すること。

可能であれば、その全職種共通の等級要件をベースにして、職種別の等級要件まで設計する。

 

しかし、等級要件を適用するメンバーの数が少ないところ、例えば人事や採用といった職種まで等級要件をつくる必要はなく、比較的人数が多くなるセールスやエンジニアに限定して、職種別等級要件を設計することが合理的です。

 

「人数が多い」ということは、評価者の人数が多くなるということ。

そのため、評価する方の目線(基準)を揃えるために、職種別等級要件の必要性が高まります。

 

また、等級数を例えば8段階とした場合、1等級や8等級で職種別等級要件が必要か、と問われると、そんなことはありません。

ここも人数が多くなる一人前レベルの3等級やその上位の4等級あたりで必要性の声が出てきて、実際に設計・運用されることになります。

 

ただ、最近の設計プロジェクトで面白い事例がありました。

 

「5等級のスペシャリストのみ、等級要件をつくる」

「かつ、エンジニアとセールスのみ」

 

という事例です。

 

自分のセオリーでは、ボリュームゾーンに職種別等級要件を設計することの費用対効果が高いと考えていたため、「5等級のみ」のプランは考えたことはありませんでした。

しかし、実際の制度運用を数多く経験すると、昇格やキャリア開発の観点で問題が発生するのは、5等級スペシャリストといった「ハイレイヤー専門職」の領域です。

個人の能力レベルが高く、会社に大きな貢献をもたらす人材として期待される等級であり、高待遇で報いる一方、キャリア開発の観点での不安は、常につきまといます。

 

特に4等級から5等級への昇格ハードルは高いため、そのロードマップは見える化してくれる職種別等級要件は効果的です。

「今」ではなく、「将来(少し先)」に最適化させる手法でもあります。

 

ハイレイヤー人材は、会社との信頼関係も強固なケースが多く、高く評価されていることもあり、キャリア開発や期待値の把握が、ややもすると「本人任せ」になりがちです。

それでも高い能力レベルゆえ、自律的に動いてくれるのですが、本人のパフォーマンスを最大化できているとはい言えません。

また、どこか別の会社でより高い期待値を伝えられれば、退職リスクも生じてしまいます。

 

本人の実力に甘えることなく、上位レイヤーの人材を引き上げる制度を企画することも人事の重要な戦略領域です。

 

ボリュームゾーンにおける取組みで費用対効果の高い成果は目に見えやすく、合理的で納得しやすいかもしれませんが、本当に効果を出すのは、ハイレイヤーです。

自戒も込めて、積極的に取り組んでいきたいと思います。

 

Share this…