「階層」の兼務に要注意

兼務について議論する機会が増えている気がします。

その中で「階層」の兼務に対して、思いのほか問題意識が高まってこないことに気づきました。

 

部門化と階層化

組織は、分業と調整で成り立っています。

仕事を分業し、分かれた仕事を調整する。

分業することを「部門化」と呼び、部門化された仕事を「階層化」によって調整するという意味です。

 

営業と採用を兼務する。

これが部門化された仕事を兼務していることです。

兼務の問題に気づく際、こちらが先に議論が挙がります。

 

一方、営業部長と営業課長を兼務する、または営業課長と営業メンバーを兼務する、というように階層化された仕事を兼務することに対して、意外にも「当然」や「普通」の感覚で見過ごされがちです。

要注意です。

 

組織で階層の兼務が起きているケース

営業組織がわかりやすいので、ケースを考えてみました。

18人の組織で3階層とします。

  • 営業部長が1名
  • 課が4つ、A課、B課、C課、D課
  • 課のメンバーはそれぞれ4名
  • 営業部長が、A課長を兼務
  • B課長とC課長は、メンバー役を兼務(つまり個人の数字を持つ、いわゆるプレイングマネージャー)
  • D課長は、マネージャー専任

 

形は違えど、こういった階層を跨いだ兼務が多々起きていることを見かけます。

これの何が問題なのでしょうか。

 

一番の問題は、「部長」が「課長」の仕事に引っ張られることです。

つまり、形式上、部長は存在するものの、機能していないということです。

 

部全体のプランニングや中長期の見立て、個人イシューへのサポートやイレギュラー対応、意思決定など、「部」の責任者として執行すべきことよりも「課」の責任者として執行すべきことが優先されてしまいます。

 

自課の成績をあげないと、部の成績は残せないという意識や、自課の成績が未達のまま、部の成績が達成されることへの引け目など、ヒトとしての様々な意識が出ます。

 

課長としてメンバークラスのマネジメント、つまり育成も考慮した仕事のやりくりは、部長としての脳の使い方とまったく異なります。

 

こうしたマルチタスクが、仕事への集中をそぎ、成果の最大化を阻害します。

 

兼務している当人は、このことに否定的な意見を述べにくいもの。

自分勝手な意見と思われるからです。

だから、階層の兼務は温存されがちに。

 

「課」を減らす

部長と課長が兼務状態になっている場合、課を減らして部長としての責任をまっとうできるように専任化することを推奨します。

削減される課のメンバーを、他の課に振り分けます。

一人当たりの数字責任が増えるかもしれませんが、その戦略を考えるのが部長であり、課長です。

 

この戦略策定機能を重視していない組織ほど、階層の兼務が発生します。

「マネジメント」といいながら、マネジメントせず、メンバーと一緒に目の前の顧客について考えてしまう。

 

責任者が向き合うのは顧客ではありません。
(顧客を軽視・無視するというわけではありません)

 

顧客に向き合うのはメンバーです。

顧客へ価値を提供し、顧客の満足度を最大化するのは、メンバーの責任であり、メンバーのやりがいです。

 

マネージャーになりましょう。

人格だけでなく、つぎ込む時間はすべてマネジメントに使いましょう。

「階層」の兼務に要注意です。

 

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