スパンオブコントロール

一人のマネージャーが何名のメンバーをマネジメントするのか。

その人数の定義をスパンオブコントロールとします。

 

一般的には7名前後でしょうか。

力不足ゆえ、正確な起源はわかりませんが軍隊の考え方から来ていると理解しています。

 

スパンオブコントロールは、組織階層を規定する

スパンオブコントロールを定義したとしてもイレギュラーケースも起きますし、法律のように守らないといけないルールでもありませんが、この概念でだいたいの「組織階層」について仮説を持つことができます。

 

例えば、スパンオブコントロールを7名としたら、「トップが7名の部長を見る、部長が7名の課長を見る、課長が7名のメンバーを見る」という構造になり、「7×7×7」の343名にトップ1名を加えた344名の4階層の組織ができます。

 

スパンオブコントロールを5名にすれば、「5×5×5」の125名+1名の126名の4階層組織です。

 

スパンオブコントロールを2名変えるだけで、同じ4階層組織でも人数に218名の差が出ます。

 

組織階層は、増やすことで副作用があります。

  • 伝言ゲームが起きて、経営のメッセージが正確に伝わりにくくなる
  • 階層に権力パワーが生じて、無駄な「政治」が起きる
  • 組織のタテとヨコの調整が増えて、意思決定のスピードが落ちる
  • 承認プロセスが増えることで、自律的な組織風土を形成しにくい
  • 問題やネガティブは情報が経営に上がってこない、もしくは上がってくるまでに時間がかかり、対応に遅れが生じる

 

こうした副作用を避けるには、なるべく組織階層を小さくしたいところですが、一方でスパンオブコントロールを広げればマネージャーの負担が上がり、マネジメントの質も下がる懸念があります。

 

トレードオフ。。。

 

オンラインワークでスパンオブコントロールが小さくなった

コロナによるオンラインシフト。

私が見ているスタートアップでは、オンラインワークが主体ではありますが、その環境下でスパンオブコントロールが議論になりました。

 

シンプルにまとめる「7名きつい」って話です。

働き方がシフトしている中で、過去と同じスパンオブコントロールでマネジメントする負担が大きくなっているようです。

 

同じ空間で対象(ヒト)を見れないがゆえ、相手の状況もわからず、マネジメントの難易度は上がっています。

こうした意見を多くのマネージャーからお聞きしました。

 

また、結果として組織内でメンタルヘルスの問題の起きています。

さまざまなメンタルヘルスサービスも出てきましたが、マネージャーによる対応が基本であることは変わりません。

 

このような状況下で、スパンオブコントロールを狭めるという議論がなされています。

例えば、「7名」ではなく「5名」にする、とか。

 

そうすると、階層は増えてしまう懸念が生じます。

悩ましい。

 

一律で考えなくてもよさそう

これまで「7名」や「5名」と人数を階層に関係なく、一律で考えていましたが、階層によって能力や責任、また相手(例えば、部長にとって相手は課長)の能力や責任も違います。

 

また、組織における仕組み化の状況は働き方も大きな影響を及ぼします。

 

仕組み化が得意で組織能力にできているケースであれば、スパンオブコントロールを広げる余地があります。

いわゆるオペレーションを磨き、マネージャーの無駄を除くことができれば、マネジメントに集中できるようになります。

 

先ほど述べた働き方、つまり「オンラインの程度」や「フレックスの程度」によってもスパンオブコントロールは変わってくるでしょう。

例えば開発組織はオンライン、営業組織はオフライン(出社推奨)となっていれば、「職種」による違いも出てきます。

フレックスかノンフレックスかでもマネジメントの仕方は変わってくるはず。

 

これは感覚ですが、フルリモート・フルフレックスであっても経営陣や上位マネージャーはオフライン主体になっているケースもあり、密な関係性の中でマネジメントできているようなケースもあります。

 

このように考えると、スパンオブコントロールは組織全体で一律の基準を設ける必要はないかも、と。

 

例を挙げれば、トップは7名、部長は6名、課長は5名、のように「階層(役職位)」によって変えたり、開発組織は6名、営業組織は4名のように「職種(部門)」によって変えることもアリです。

もちろん、ハイブリッドもアリです。

 

冒頭でも記した通り、あくまでも考え方・ガイドラインであり、様々なイレギュラーがありますが、将来の組織階層を考える上で、スパンオブコントロールを柔軟にしてイメージを膨らませることも効果的だと考えています。

 

そして、本議論を飲み込んでいただければ、どの組織にも最適なスパンオブコントロールを提唱することは現実的ではないと理解できるかと。

 

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