【人事異動の話】経営人材候補であることを伝えないって、意味がわからない。もうこういうのはやめよう。

組織拡張し、人材の育成や配置を考えるフェーズに入ってきたとき、日本企業の一般論を知識として知っておくことは、議論のために役立つと思います。

反面教師にする意味でも。

そんな知識を得て、思考のキッカケとして『人事ガチャの秘密 ー配属・移動・昇進のからくりー』は参考になる本でした。

新書ってのが良き。

 

幅広い領域について学べる

こちらの本、著者である藤井薫さんはパーソル総合研究所の方ということで、データを豊富に使っており、現場の方のコメントがたくさん。

客観的な分析と生々しい声をインプットできます。

 

「人事ガチャ」というタイトルは、昨今の配属ガチャの流れを意識されているかと思いますが、日本企業のローテーションや配置の実態を、全般的に知ることができました。

自分にとっては良い振り返りになっています。

 

ホンダの事例はおもしろい

自分として唸ったのは、著者の経験が書かれたホンダ社のキャリア開発の事例。

以下に引用させていただきます。

 

ホンダの考え方は実践的でした。ホンダのCDPは、X・Y・Zの3つの軸に個人別に優先度をつけて、10年間でその軸のどれかを2回変更するというものでした。「X軸=製品、Y軸=職種、Z軸=地域」です。(一部省略) たとえば、Aさんの優先順位は、「①は職種で営業企画、②は製品で二輪車、③が地域」、つまり、「営業企画にこだわりたい。できれば二輪車担当で、場所は国内外どこでもOK」、Bさんは①地域、②製品、③職種で、「海外で自動車関係の仕事を希望。営業でもそれ以外でも構わない」というキャリア希望です。会社はそれをできるだけ尊重して、10年間で2回のローテーションを行うという考え方でした。「それくらい柔軟なものでなければ運用できない」という言葉が強く印象に残っています。今日でもそのまま通用する素晴らしい仕組みだと思います。

人事ガチャの秘密 配属・移動・昇進のからくり』藤井薫 P121-122

 

本当にその通りです。

これぐらいシンプルでエッジの効いた枠組みでないと、人材育成は回りません。

昨今のタレントマネジメントでやられている情報を集めて、会議体でキャリアについて云々議論するよりも、よっぽど実践的です。

 

戦略とは、何を捨てるか。

捨てられた先に残ったX・Y・Zの軸は秀逸です。

 

自分もこの軸を使って、クライアントに提案してみようかな。

 

経営人材候補であることを伝えている企業は3割

このテーマ、他の本や雑誌でも自分の中で重要テーマだったので、まさかこの本からもインプットできてるとは思っていませんでした。

最近、経営人材の育成、サクセッションプラン/サクセッションマネジメントについて調べている中で気になっていたことです。

経営人材候補を選抜・育成する過程で、その選抜されたことを本人に伝えるか否か。

ある会社で「伝えない」となっていたのです。

でも、選抜研修とかはやっている。

本人にバレるじゃん。。。

「そうですね」的な話が書かれてて、おいおい、って。

こういうの、自分、ダメなのです。

許せないのです、こういう態度。

こういうのを人事がやってるってだけで怒りしか出てきません。

もちろん相手の理屈はあると思うのですが、それが通ってしまう環境に怒りしかありません。

一人で勝手にヒートアップしていますが、こんな話が本書にもあったのです。

 

「世間での開示方向は承知しているが、プールから外れた時の本人のモチベーションや年次管理の慣行を配慮して本人には通知していない。役員からも開示しないでほしいという要請もある」(金融業人事部)

人事ガチャの秘密 配属・移動・昇進のからくり』藤井薫 P174

 

なんだよ、これって感じです。

「要請」されていることで自己正当化しているのは勘弁してほしい。

 

昇進という上の方向への出世競争が前提で、「プールから外れ」た際の影響に配慮しているその姿に、人事の仕事への誇りを感じません。

(いいかげん、こういうのやめようよ)

 

時代錯誤ですね。

でも、これがマジョリティであり、世の中なんだともわかっています。

だから、おもしろいし、自分は自分の頭で思考することが大事なんだと再認識できます。

 

「年次管理」とか、口にするだけで思考〇止だ。

 

今自分が関与できているスタートアップでは、50年から100年経った先でも、こうしたことがないようにしていきたいと思っています。

そんな先、、、ではありますが、こうしたカルチャーをつくっていくことは大事。

 

キレイゴトでも建て前でもなく、本音でしかない。

  

Share this…