マネージャーアサインに「チャレンジ枠」はアリ?

300名規模の組織へとスケールするにあたり、組織は本部、部、課、そしてメンバーと少なくとも4つ程度の階層構造に進化します。

組織をつくることは机上で合意できますが、組織を運営する「人」、つまりマネージャーが必要です。

「あれもしたい・これもしたい」という思いが、組織図をいじることで実現できたように錯覚してしまうものの、マネージャーのアサインが間に合いません。

 
ここで陥りがちなのは、マネージャーのアサインに「チャレンジ」すること。

「チャレンジ」とは、「できるかどうかわからないけど、とりあえずやらせてみよう」と判断してしまうことです。

プレイヤーとして優秀な人材を早期に抜擢したり、前職でマネージャー経験が多少ある方を採用し、自社の基準で判断することなく、マネージャーにアサインしてしまうことがあります。

 

これは避けなければなりません。

得てして、こういったアサインの際、配置を命じる方は「違和感」を感じています。本当に大丈夫かどうか、強い自信を抱くことはできていません。

しかし、事業を成長させるためには配置が必要なため、正当化できてしまうのです。

しかし、マネージャーアサインへの違和感が、杞憂で終わることはなく、その後、問題として表出します。

 
多くはマネージャーのマネジメントに関する技術、知識、経験の不足から意思決定が遅れ、仕事が前進しないことによるメンバーからの信頼不全、そして人間関係への悪化に発展します。

目標設定や人事評価への納得感の無さ、報酬への不安。ハラスメント系やメンタル系の問題に進むこともあります。

「事業のために致し方なし」と割り切って問題を美化してはいけません。

人・組織の問題は、最終的に事業成長の鈍化につながります。目先の利益を追い求めても、中長期的に大きな損害を被ることに注意が必要です。

 
人事制度の観点で気をつけたいことは、マネージャーにアサインすること、つまり役職への配置を報酬と連動させることです。

いわゆる等級と役職を連動させることで、役職配置によって等級も報酬も上がる構図です。

これは、人事制度としてやってはいけない形です。制度としてのわかりやすさはもちろんありますが、副作用が強すぎます。

 
マネージャーに問題があった際、役職を解任しようとしても、報酬ダウンの影響があるため、意思決定が遅れます。

問題への対処が遅れ、当事者である配下のメンバーから「対応してくれない」「対応が遅い」と信頼を失います。

 

マネージャーを解任した場合、後任をどうするのか、社内で補填するのか、社外から新規で採用するのか、社内外に目先の候補はいるのか、本当に次は大丈夫なのか。

解任した元マネージャーの次の役割は何か、どんな仕事が適任なのか、別チームでマネージャーをやってもらうべきか、そもそも解任したら辞めてしまわないか、本当に大丈夫なのか。答えの出ない悩みに苦しみます。

 
この状況を回避するために、101-300名フェーズになる前のマネージャー採用が重要です。

このフェーズにおける問題を想定して、マネージャーもしくはマネージャー候補の採用を進めておきます。

 

成長が早いスタートアップでは、人材育成では間に合いません。

もちろん育成施策には取り組むべきですが、問題解決の優先アプローチは人材採用です。

「いや、そんなの簡単にできない」というのは簡単です。

 

でも、後で同じ問題に対処することになるのです。

着手が遅ければ、現場で勃発しているマネジメント課題に並行して向き合うことになります。

100名の組織へと拡張する際、300名フェーズの主要ポストにアサインできるマネージャー採用を実行しておくことが300名フェーズを乗り切る勘所です。

 

また、採用は進めながらも、マネージャーへの配置を見極める仕組みも効果的です。

マネージャーとしての経験を洗い出し、役割を果たせるかどうかについて仮説をもちます。

もし、このときマネージャー配置に不安が出たら、配置を諦めるのではなく、マネージャーに対するフォロー体制を検討します。

 

100点の組織をつくることは、成長著しいスタートアップほど不可能な話です。

だからこそ、足りない部分を言語化し、組織的にバックアップ体制をつくりながら、何とか乗り切るのです。

目標設定に不安があれば、マネージャーの上長がサポートする。

メイン評価者として難しいようであればサブ評価者にその旨を伝え、協力体制を依頼する。

「マネージャー研修したので、後は任せた。」ではなく、今時点でできることを洗い出し、伴走してあげましょう。

 

この取組みの前提として認識を揃えておきたいことは、「責任」に対する意識です。マネージャーの配置が結果として失敗だったと判断したとき、その責任は当の本人であるマネージャー自身にある、と思ってはいけません。

 

では、一体誰にその責任があるのか。

マネージャーの配置を命じた方、その多くは経営陣に当たります。任命者の責任なのです。

「マネージャーの能力が足りなかった」と嘆いてはいけません。

配置した方に責任があるのです。

 

この意識がしっかりとあれば、伴走することに違和感は出ません。

自らの意思決定を正解とするには、自ら汗をかく必要があります。それが、101-300名フェーズなのです。

 

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