降格・降給を実施できるか?

300人に組織拡張するフェーズでは、人事制度の運用や改善にも慣れてきて、比較的安定した運用に落ち着きます。

しかし、人が増えれば増えるだけ問題が起きるもの、それが組織人事です。このフェーズでは、期待するパフォーマンスを発揮できない方が目立ち始めます。

ひどい状況になると、本人のパフォーマンスだけでなく、周囲のパフォーマンスに対して影響を及ぼしてしまうこともあります。現場も人事も対処に迷うケースです。

 

降格や降給を実行したことはある?

降格や降給は、人事制度としてきちんと整備されている一方、これまで一度も運用されたことがないケースもしばしばあります。

もちろん、正しい運用の結果として、降格や降給は運用する機会がなければ、それに越したことはありません。

ただし、運用すべき場面に直面しても、経験や実績がないことを理由に必要以上に避けてはなりません。

事前に示した基準に照らして不足があれば、素直に伝え、改善に向けて共に動き出すことから始めます。

 
期待されるパフォーマンスが発揮できていない場合であれば、期中のフィードバックを意図的に増やし、具体的な改善を求めます。

目標も最終的なゴールだけで擦り合わせるのではなく、プロセスについても具体的に擦り合わせます。

そして、相手に改善を求めるだけでなく、上長としてサポートできることを探し、チームで対応することも検討すべき領域です。

それでも改善されなければ低評価となり、この状態が続くようであれば等級要件に照らして降格や降給も検討しなければなりません。

 

降格アラート

降格については「降格アラート」によってサプライズが起きないようフェアにコミュニケーションできる仕組みを推奨しています。

しかし、日々のフィードバックがない中で降格アラートが発動されれば、もちろんサプライズが容易に起きてしまいます。

中間評価や期末評価のタイミングで、降格の懸念を少しでも察知したら、現場に任せ過ぎず、経営や人事としてフォローするように心がけます。

 
降格や降給の場面に初めて直面した際、労務リスクを印籠にうやむやな対応でやり過ごすと、その後も同じ対応になりがちです。

人事制度はポジティブな側面に対してもルールに基づいて実行する反面、ネガティブな側面に対しても毅然とした態度で接する必要があります。

経営に対しても、現場に対しても、人事がフェアで中立的な立場であり、存在であることを示す大事な機会でもあります。

 

信頼関係は、「掛け算」で考える

特に、降格の必要性がありながら問題が放置されることは、その事実を見ている組織メンバーからの信頼低下です。

「なぜ、あの人が4等級なのか?」「自分より、あの人の等級が高いことに納得できない」という心の声は、人事制度やその制度を運用する経営への信頼を低下させてしまいます。

「300名のうちの1つのケースに過ぎない」と過小評価してしまうかもしれませんが、こうした信頼は足し算ではなく、掛け算で考えるべきです。

1つのゼロが掛け算されると、信頼残高の合計もゼロになります。等級判定の妥協は許されません。完璧を目指した運用を心がけましょう。

 

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