100名の組織へと拡張する際、期待する仕事・成果と人材能力にミスマッチが生じるケースが起こり始めます。
しかし、会社へのコミットメントは高く、いわゆるカルチャーフィットに問題はないと感じるため、対応が遅れがちに。
人事は、早めに「異動」を検討し、ルールを制定した上で、社内における初の事例をつくっていきましょう。
採用が最優先
このフェーズは、事業の勢いが増し、採用のスピードを加速させるフェーズです。
事業を伸ばすために人が必要になるため、何としても人材を採用したい。
そんな気持ちが経営陣から溢れ、現場や採用チームに伝わります。
すると、A職種に応募してきた方について、実力不足ゆえ不採用とする一方、会社への強い思いやカルチャーフィットの良さを理由に会社がB職種を提案して入社決定に至るケースが起きます。
「人」ベースで採用してしまうケースです。
異動を考える場面
うまくいくケースもあるかもしれませんが、私はそのケースをほとんど見ていません。
そもそも入社者が、自分でやりたいと思った仕事でないため、入社後のキャッチアップがどうしても会社側の期待にマッチしないようです。
スタートアップで働くには、自律的に考え、工夫・改善することが求められます。
経験や能力、専門性がない方が、簡単に活躍できるフィールドではありません。
半年から1年も経つと、「こんなはずじゃなかった」とお互いで感じるようになります。
人事は、現場に任せず、介入します。その方が活躍できる場を社内で探し、異動を検討するのです。このとき、これまで自社で異動の経験がないため、初の事例となります。
異動方針について、どう考えるべきか?
特に考えないといけないことは、そもそも今後も「異動」を積極的に推進するのか、それとも積極的なスタンスは取らないのか。
職種による違いもありますし、時間が経つことによって変わることも当然予想されます。
ただし、個別事例として局所的に対応するのではなく、方針を議論する場を設計することで、関係者の人事に対する価値観を振り返り、抽出する機会としても役立ちます。
こうしたパーツをいくつも積み上げていくことで、自社の人事に関するポリシーが形作られていきます。
また、異動時の報酬についても検討が必要です。
異動先でのパフォーマンスを想定した上で、今の報酬水準を維持できるのか。
難しい場合、報酬を下げることはせず、本人の努力によるキャッチアップを期待して期間限定の調整手当で年収を維持します。
異動は、現場に任せても動きません。
特にミスマッチから生じるニーズは、マネージャー自身の人事評価にも関わるため、情報の発信が遅れがちになります。
中間評価や期末評価、等級判定や報酬決定の人事イベントの他に、メンバーのキャリアや成長について情報交換するフラットな場を設けたり、組織サーベイなどのアンケートを使うなど、情報を吸い上げる仕掛けをつくり、メンバーにとって最適な配置が実現できているか否かについて、常に目を光らせることも人事の役目です。