【組織の基本形態】機能別(職能別)組織、事業部制組織、マトリクス組織

先日、「機能別組織(職能別組織)の課題」について、書籍を参考に知見を整理しました。

このテーマについて「機能別組織「ではない組織構造」にはどんな類型があるのか」という質問を頂きましたので、ざっとまとめました。

組織デザイン』(著:沼上幹)を参考にしました。

 

事業部制組織

機能別組織で取り上げた課題を解決できる組織形態が事業部制組織です。

事業を軸に組織をつくります。

『組織デザイン』の中では、パソコン事業部や白物家電事業部が例にあり、その事業部内に研究開発や生産、販売といった機能(職能)組織が構成されています。

マーケット志向をもつ事業部長が、リーダーシップを発揮し、事業推進する組織形態です。

なお、経理や人事といった経営管理部門は事業部門と別に並列して組織化されます。

 

自分がコンサルティング現場で見た事業部制組織にゲーム会社がありました。

ゲームタイトルが1事業として定義されており、各ゲームタイトル別にプロデューサーと呼ばれる事業部長が配置されています。

ゲームタイトル別に、プランナー、エンジニア、デザイナー、事業開発等の専門人材がおり、チームとしてゲーム開発を進めていく組織です。

ゲームは山っ気の強いビジネスゆえ、組織改編が多く、当たる・当たらないの世界のため、撤退ラインの設計が非常に難しいなと感じました。

 

沼上氏が指摘している通り、組織の基本形態は「機能別組織」か「事業部制組織」か、です。

この2つの組織形態から派生して、他のオプション形態ができます。

その中間オプションである組織形態がマトリクス組織です。

 

マトリクス組織

マトリクス組織は、組織を定める軸を「事業or機能」といった1軸で決めるのではなく、「事業×機能」の2軸で決める組織です。

事業部長と機能部長(例:営業部長)がいるため、ツーボスシステムとなります。

意思決定の権限や責任を決めておかないと、判断に時間がかかるデメリットがありますが、両者のいいとこ取りができる組織です。

このマトリクス組織は非常に複雑な組織です。

こんなにも複雑な組織に発展する理由は何か。

それは顧客からの要請です。

そうせざるを得ない状況になった場合にマトリクス組織へと移行します。

 

一部事業部制組織

事業部制組織の中に、事業部横断で一部のみ組織化される形態が、一部事業部制組織です。

『組織デザイン』では、「基礎研究所」がCEO直属として組織化されたり、事業部に並列する形態で「営業本部」が組織化されたりしています。

あくまでも一例です。

経営戦略を実現するために、事業部制組織を採用する一方、基礎研究や営業についてCEOの意思決定を重視したり、営業ノウハウの蓄積や営業リーダーの意思決定の迅速さを重視した結果というわけです。

ここが組織設計の最大の難所であり、一番面白いところだと思います。

沼上氏の一部事業部制組織に対する意見も引用させて頂きます。

 

ここで強調したいのは、この種の現実的な「中間形態」が中途半端でダメな組織だということではない。そもそも機能別組織や製品別事業部制組織などを「理想型」と呼んでいるのは、それらが「理想の組織」だと美化するためではなく、頭の中にしか存在しないようなものだという意味を伝えたかったためである。現実の組織は、そこにいる組織メンバーと、その顧客の要求、競争相手や技術変化の特徴等々といった多様な要因に適合させるべく、当初のひな形にいろいろ手を入れて「中間形態」として成立せざるを得ないものなのである。そして、その現実的な「中間形態」を理解するうえで、まず初めに機能別組織・事業部制組織・マトリクス組織といった基本型を理解しておくことが役に立つ。これがポイントである。(P37-38)

 

事業部の組織規模が大きくなり、括り方の階層が増えれば事業本部制に発展します。

また、より財務の観点で各事業部を1つの会社とみなしてコントロールする場合、経営管理機能も各事業部に含めて組織化するカンパニー制であったり、それこそ本当の会社として分割して中央でコントロールするホールディングス形態もあります。

 

ただし、基本的な考え方は沼上氏の言うとおり、機能別組織と事業部制組織をベースに考え、それぞれの利点と副作用を考慮しながら、組織形態を現実に落とし込みます。

その根拠になるのはもちろん経営戦略ですが、実際には「人」の能力に左右されます。

経営戦略=トップダウン、人=ボトムアップ、で決まる、というか決めなければいけないのが組織です。

人ベースでボトムアップの組織をつくると戦略実行に最適な組織形態にならず、「今を生きる」組織になりがちです。

経営戦略という理想を描き、人という現実・現場を踏まえた組織がファーストステップで目指す組織。セカンドステップとしては、現実の人では不足しているピースがあるはずなので、そのピースを埋めにいくことを目指す組織です。

組織の観点で変化に適応するとは、こういうことだと考えています。

 

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