成果評価における目標設定(2)

成果評価における目標設定(1) の続きです。

 

「目標だけでなく、目的まで設定する」目標設定について、具体的な How を紹介します。

 

目的は、目標から逆算する

このやり方が、いかなるケースにおいて正解とまでは言えないのですが、目標から逆算する手順で目的を考え、設定することをオススメします。

 

理由は、目的から考えると「目標=目的」になってしまい、うまく目的を言語化できないから、です。

制度導入期に、目標設定のレビューをすると、多くのケースで「目標=目的」となってしまい、目標の Why が言語化されません。

 

目的より目標の方が設定(言語化)しやすく、目標は複数に及ぶため、まず目標から整理していきます。

できあがった目標一覧を眺めながら「そもそも、自分がこの目標を追いかける理由って何だっけ?」と。

自らに問いかけ、目的を言語化してみます。

この際、1つに絞ることにこだわらず、多様な観点から目的を抽出し、必要に応じて「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」と繰り返すことも有効です。

浮かび上がった目的一覧と現状の「課題」を照らし合わせて、しっくりくる目的を選びます。

 

この目的の言語化と選択は、ロジックだけでなく、一部にアートな能力が求められます。

抽象化するスキルと文章力です。

すぐに誰でも簡単にできるものではありません。

慣れとトレーニングが必要なので、何度か上長にフィードバックをもらい、添削していくことをオススメします。

 

深い思考で抽出された目的が設定できると、期中の様々な環境変化に動じることなく、自信をもって自らのミッションに邁進できるようになります。

 

最後に「目的」は、原則一人一つです。

原則と書いたのは、兼務の場合、どうしても2つ(以上)になってしまうから。

なるべく短い文章で、シンプルにします。

複雑は、悪です。

 

「期待」を定義する

目標を考える場合、指標と水準の根拠となるモノサシは、一言でいってしまうと「期待」です。

「相手に対する期待は何か」を、目標として翻訳していきます。

 

では、「期待」とは何を意味するのでしょうか?

自分は整理では、以下の式となります。

 

期待 = ①等級要件 (must) × ②相手の強み(can) × ③相手のやりたいこと(will) × ④状況

 

will/can/must です。

全社共通の等級要件、または職種別の等級要件を、さらに本人の仕事に照らして翻訳しながら、期待を考えます。

同時に、相手の強みとやりたいことも反映します。

「強み」を見るという中には、相手の性格まで考慮することが含まれています。

これだけでも膨大な変数となるのが、目標設定の難しさです。

 

最後の「④状況」が変数を無限化させます。

例えば、相手が入社してすぐのタイミングで目標設定するのか、自社で数年の経験があり、ある程度慣れているのか、とか、チームのコンディションやリソースの状況とか。

マネージャーは、当時と少し先(≒評価期間である6ヶ月先)を見通しながら、状況を見通します。

 

期待という1ワードには、無限の拡がりがあります。

この拡がりに対して、ロジックとアートを交差させた地点に、素晴らしい目標ができあがります。

 

評価尺度を当てはめる

設定された目標は、最終的に測定・評価されます。

その評価の認識ズレを起こさないために、期初の目標設定のタイミングで、できる範囲で評価尺度を当てはめておきます。

具体的には、「この目標が実現できたら100点」なのか、「120点なのか」、いやいや「80点なのか」を話し合って決めておく、ということです。

 

例えば、成果評価の評価尺度を、次のとおり設計したとします。

  • outstanding:最高レベル
  • excellent:期待を大きく上回る
  • very good:期待を上回る
  • satisfactory:期待水準
  • almost:期待を少し下回る
  • improvement:期待を下回る
  • unsatisfactory:期待を大きく下回る

 

特に擦り合わせたいのは、「この目標が実現できたらsatisfactoryなのか、very goodなのか、excellentなのか」という観点。

 

ストレッチ目標と呼ばれるものは、excellent目標か、very good目標を意味しています。

ストレッチだと、わかりやすい概念ですが抽象度が高過ぎるので、評価尺度にまで落とし込むことが大切です。

このコミュニケーションが取れれば、目標の水準を下げた方が評価が高くなる、と安易なハックは起きません。

(参考:『低い目標を立てれば、評価は上がりますか?』)

 

期初時点では、評価尺度まで当て込むことができないケースも、もちろんあります。

無理に決める必要はないですが、話し合うこと、仮説でも構わないので設定してみること、を繰り返すと、目標設定のコツがつかめてきます。

 

この尺度の当て込みと一緒に「測定方法」についても妥協せず、考えましょう。

定量的な測定方法を設計するのか、定性的な評価方法とするのか。

無理に定量化して、正しい行動に方向付けできなくなるようであれば、定性(非定量)でも構いません。

どちらであっても、①測定・評価が現実的に可能か、②その測定・評価方法で目標への実現度合いを正しく振り返ることができるか、の視点でレビューしましょう。

 

「達成率」だけで測る一般的な目標設定は、ゴールが決まっているゲームには有効ですが、先が見えない環境で、試行錯誤しながらゴールをつくっていくゲームには不向きだと考えています。

スタートアップは、後者のど真ん中にいます。

 

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