評価制度を議論、説明、運用する中で、被評価者の方から、よく聞く声です。
そもそも、の観点で考えてみます。
達成率の視点
前提を整理すると、評価制度は「成果」と「行動」の2軸で構成されることが多く、その「成果」を目標への達成率で評価します。
たとえば
- 目標が100で、実績が100であれば、100%の達成率
となります。
『低い目標を立てれば、評価は上がりますか?』と話す方は
- 目標が50だったら、実績が同じ100でも、200%の達成率
- 目標が200だったら、実績が同じ100でも、50%の達成率
と考えます。
制度次第のところはありますが、「達成率」だけで評価するのであれば『低い目標を立てれば、評価は上がります』。
でも、そもそも、そのような心配をする必要はないと思っています。
目標を承認するのは、誰か?
上記の文脈の前提として、「被評価者本人が目標を考えて決める、すなわち承認する権限をもっている」と読み取れます。
しかし、原理原則として被評価者本人が目標を承認する権限をもつことはありません。
権限をもっているのは、評価者であるマネージャーです。
マネージャーは会社全体の目標から自組織でやるべき成果を定義し、それをチームで実現していく役割を担います。
よって、被評価者の目標内容(指標と水準)を決めるのは、マネージャーとなります。
被評価者に対して『低い目標を立てれば、評価は上がります』が、マネージャー自身の評価は下がりますし、会社全体の目標も達成できません。
構造的対立が起きるので、そもそも『低い目標を立てれば』という発想はないのです。
被評価者が心配する必要はありません。
なぜなら、被評価者に目標を承認する権限はないので。
自分で目標を考えるということ
こう述べると「言われたことだけをやるんですか?」と聞かれます。
「言われたことだけをやってください」とは言っていません。
「目標を承認するのは、被評価者ではなく、評価者であるマネージャーです」と言っています。
つまり、目標やその実現方法を考えたり、提案することは、被評価者の役目です。
会社の目標を実現するために、マストでやらねばならぬことはマネージャーからトップダウンで降りてきます。
トップダウンの目標に対して、被評価者のやる気と実現可能性を高めるのがマネージャーの仕事。
平易な言葉で表現すれば、被評価者に「やりたい」「できる」と思わせて、実現させることです。
トップダウンの目標以外に、被評価者自身がやりたいこと・組織的にやった方がいいと思うことは、被評価者自らが提案する裁量はあります。
提案を引き出すのも、マネージャーの大事な役目です。
トップダウン目標だけが目標設定になっていると「やらされ感」が強くなり、自律駆動できません。
スピードが組織能力の差別化になり得る現在、自律型の組織をつくるにはマネージャーの目標設定に対するスキルとマイントセットが最重要です。