評価制度の2本柱である成果評価と行動評価。
多くのスタートアップでは、行動評価の評価基準に自社のバリューを反映させて、バリューの浸透を図っています。
▼参考
行動を評価する理由
理由は2つです。
1つ目は、成果を継続的に出せる再現性を強化するため。
成果評価は「結果」、行動評価は「結果までのプロセス」を評価します。
成果は、環境の影響を強く受けます。
社外だけでなく、社内の方針や組織の状況、例えば採用や退職にも影響を受けます。
ある意味、本人にとってアンコントローラブルな要素があるということ。
成果だけの評価だと、結果がダメなら「×」とフィードバックされます。
しかし、プロセスとしては評価すべきことがあるかもしれません。
結果が「×」だったからといって、すべてが「×」というわけではありません。
良かった点は「〇」とフィードバックすることは、組織能力を向上させるためにも必要です。
2つ目は、被評価者本人の納得感。
上記の通り、成果にはアンコントローラブルな要素があるため、その結果だけで評価されると納得できない部分が生じます。
納得感に基づくやる気(モチベーション)を高めることも行動評価の目的です。
行動評価の評価基準
行動を評価する場合、抽象的なバリューを具体的な行動事例に落とし込む(翻訳する)ことが必要です。
例えば「チームワーク」に関するバリューを、行動事例に落とし込むとどうなるか?
以下は、評価基準のサンプルです。
良い事例 (Good) |
① 困っていたら助ける ② 自分が困ったら、遠慮せず自ら助けを求める ③ 率直にフィードバックする ④ 先入観なく、相手の意見に耳を傾ける ⑤ 情報の透明性を高める ⑥ 何事にも建設的に批判する ⑦ 他人の成功を素直に称賛する |
悪い事例 (NG) |
① 困っていても、自ら助けようとしない ② 問題を一人で抱え込みがち(結果、対応が遅れる) ③ あとになって「そう思っていた」と伝える ④ 先入観をもち、特定の人の意見を聞こうとしない ⑤ 情報共有が遅い(言われてから共有している) ⑥ 感情的に非難する ⑦ 重箱の隅をつつく |
良い事例(+)だけでなく、悪い事例(-)も言語化できると、バリューの理解に役立ちます。
表現はシンプルかつ簡潔に。
これってどういう意味?とならないレベル感で言語化します。
また制度導入期は、等級や職種によって基準を分けない(詳細化しない)こともおすすめしています。
「詳細に分けた方が正しく評価できるのでは?」という意見は、まったくその通りなのですが、おすすめはしていません。
理由は、バリューの理解を優先させたいから。
評価制度の導入に伴って、初めてバリューを具体化するケースがほとんどだと思います。
この状況では、そもそもバリューを同じ目線で捉えることが難しい。
それが等級や職種によって多様化してしまうと、評価の目線がズレてしまいます。
まずは同じ目線(評価基準)で評価することからスタートしましょう。
いざ等級や職種に応じて評価基準を分けようとしても、簡単にはできません。
この設計に時間をかけて悩むよりは、同じ基準でまずは制度を運用してみることが大事だと考えています。
基準設計の Tips
表現はシンプルかつ簡潔に、とガイドしましたが、評価基準の設計には他にも Tips があります。
一覧にまとめました。
- 1つのバリューにつき、評価基準(判断・行動の例)は、5-7つに絞る
- バイネームで過去の事例を思い浮かべながら、評価基準を設計する (机上の空論でつくらない)
- 1つの評価基準(判断・行動の例)につき、文字数は「10~20文字」が目安 (最大で30文字程度)
- 1つの評価基準(判断・行動の例)に、複数の意味を設定しない
- 日々の会話の中で、そのままフィードバックできる表現にする (話し言葉を意識する)
- ヌケモレを気にし過ぎない、「評価基準は厳選した例である」と捉える
- 異なる意味を無理やり入れない、解釈を広げ過ぎない
- 6ヶ月ごとの期末評価終了後、評価基準を更新する前提でつくる
(判断・行動の例を、最新版にアップデートする) - 1-2年の運用を経て、評価に慣れてきたら、職種別の評価基準を設計を検討する
(全職種でなく、人数が多い一部の職種のみの導入可)
特に「話し言葉を意識する」ことは重要。
そのままフィードバックできる表現になっていると現場で使われる評価基準になります。
ここで格好つけると、評価基準が形骸化しがち。
自分たちが日常で使っている表現・ワーディング・文体・語彙を意識的に活用しましょう。
細部にまでこだわって、自社の基準を設計してみてください。