「新人事制度への移行_その1」の続きです。
報酬制度の移行
マスタースケジュールは以下の通り、定めました。
- 2022年7‐12月:6ヶ月間の設計、導入(社員説明含む)
- 2023年1-6月:新人事制度のトライアル運用
- 2023年7‐12月:本番運用
このスケジュールで報酬制度の移行を考えると、結論として新報酬レンジを適用するのは、2023年7月以降になります。
理由は、新人事制度のトライアル運用で使用する仮等級を、本等級に変更するタイミングが7月になるためです。
本等級に基づく新報酬レンジは、本等級の決定と同時に運用開始となります。
昇給テーブルは、2023年1-6月の評価を踏まえて、7月に新昇給テーブルを活用します。
1-6月の評価は新評価制度のトライアル運用であり、新評価制度の評価結果と旧報酬制度における昇給テーブルは対応関係がないのが理由です。
少し細かい話ですが、報酬改定のステップは「評価に基づく昇給(評価昇給) → 昇格に基づく昇給(昇格昇給)」です。
評価の前提となる目標設定(期待値の設定)は、昇格前の等級で実施されているため、昇格前の等級に紐づく報酬レンジで評価昇給を、次に昇格昇給を実施します。。
よくあるステップとして、まず昇格昇給によって上位等級の下限まで昇給し、その下限額から評価昇給をアドオンすることがありますが、これだと、昇格前の等級で決まった評価結果が、昇格後の報酬レンジに反映される点に不整合が生じます。
そもそも、この方は昇格後の等級として目標設定も評価もしていないので。
細部にもこだわって設計し、言語化しておきたいところです。
評価制度の移行
2023年1-6月のトライアル運用で、新評価制度を運用します。
1月は、おそらく改定前の評価制度で評価を決めると同時に、新制度で評価制度上の目標設定を実施する2つの行事が平行して走る状態になります。
特に改定前のポリシーや基準で、新制度の目標設定を考えることに陥りがち。
まずは評価者であるマネージャーに評価制度に関して理解活動を根気よく続け、マネージャーのサポートを人事側でできる体制づくりをしておくことが理想です。
改定前の評価制度が完了し、新制度の目標設定が終われば、あとは通常の運用にのるため、特別大きな負担や混乱は見かけません。
移行期は、期間限定の繁忙が起きることを覚悟して、事前にドキュメント対応できるように準備しておくこともポイントです。
こういうのは、いくら事前に説明しても、いざ当事者となってやるまで質問は出てきません。
「早く言ってよ。。。」という心の声に蓋をした、自分ではない文書が説明・対応してくれる環境づくりをしておきましょう。
実際のところは、ケースバイケース
「新人事制度への移行_その1」で前提条件をおき、移行のスケジュールや方法を考えてきました。
ただし、移行は本当にケースバイケース。
現行制度に課題があり、制度変更を企画し、移行するわけですが、その課題が「制度」に関するケースであれば、準備と説明をつくせば問題なく進むかと。
一方、「制度」というよりは「個人の報酬」や「マネージャー(≒ 組織能力)」に課題が起因するケースだと、難易度は劇的に上がります。
制度を変えて理想を定義しても目先で大きな報酬ギャップが生じている、とか、いくら素晴らしい制度をつくっても運用する側の能力や気持ちが追い付かない、であったり、「そうはいっても現実的には難しいよね」という風潮が、組織内に強まってきます。
こういう事例をたくさん経験していれば、多様な引き出しを駆使して対応できますが、経験できる機会もそう多くはありません。
周囲にも相談しにくく、公にできない情報だったりするので、エイヤーで決めることもできず、制度改定の背景が忘れられてしまったかのように、中途半端な結論に落ち着くことも懸念されます。
法的なリスクは社内労務や外部の弁護士などに協力を仰ぎながら対応し、あるべき制度と移行プランを描くことが人事の役目です。
駆け引きの観点では、引いてもよいところと引いてはいけないところを整理する、すなわち形骸化のティッピングポイントを見極めた上で、関係者と協議していくことをおすすめします。