「納得感をつくる評価者の体制とは?」で、メイン評価者とサブ評価者の考え方を説明しました。
一次評価者・二次評価者の体制ではなく、メイン評価者が責任をもち、サブ評価者がサポートする体制です。
評価制度を運用する過程で、組織が複雑になると評価者の設定に悩みます。
様々な質問が出てくるので、事前にガイドラインを考え、周知しておくことをおすすめします。
今回は、その質問とガイドラインをまとめました。
【Q1】被評価者より等級が低いメイン評価者は OK?
【A】No
等級は、人材レベルのこと。
等級の項目にもよりますが、例えば能力やバリュー体現、リーダーシップで定義されている場合、そのレベルが高い人がメイン評価者であるべきです。
その方が、被評価者の評価に対する納得感も上がります。
許容できるのは、メイン評価者と被評価者で等級が同じ場合まで。
またサブ評価者は、最終評価にダイレクトに反映されるわけではなく、メイン評価者が見えていない領域をサポートする評価のため、サブ評価者が被評価者よりも等級が低いことは「有り」にしています。
【Q2】サブ評価者に適した人がいない場合、設定しないのは OK?
【A】OK
無理に設定する必要はありません。
過去、期初のタイミングで適切なサブ評価者がいないと声が挙がっていた一方で、公平性を意識して無理にサブ評価者を設定したことがありますが、評価のタイミングでサブ評価者から「評価できない」「わからない」と意見をもらい、結局形骸化してしまったことがありました。
この状態に陥るのであれば、期初に「サブ評価者は設定しない」と決めて、メイン評価者に単独で評価の責任をもってもらうことをおすすめします。
【Q3】サブ評価者の候補が複数いる場合、複数名を設定するのは OK?
【A】OK
他部門との連携が多いケースだと「この人からの意見(サブ評価)も欲しいし、この人からもあると助かる」というメイン評価者の声が出ます。
その場合、サブ評価者を複数名設定することもありますし、期中で変わる・増える可能性が高い場合、サブ評価者を関係者ヒアリングとして、必要に応じてメイン評価者がサブ評価を依頼することもあります。
関係者ヒアリングの場合、サブ評価は評価記号はつけず、評価コメントだけの関与です。
ちなみに、メイン評価者を複数設定することはありません。
あくまでも一人の方に評価・フィードバックの責任を担ってもらうことをポリシーとしています。
【Q4】入社直後の人を、メイン評価者に設定するのは OK?
【A】No
一度も自社の評価を受けていない方が、メイン評価者になることは原則回避しています。
ただし、評価制度導入時はもちろん全員が初めての評価運用となるので、この通りではありません。
また、組織拡張期でマネージャー採用が一気に進むタイミングでも、やむを得ず入社後すぐメイン評価者になることもあります。
望ましいのは、次のような丁寧なプロセスを経て、メイン評価をを担うことです。
- 自分が被評価者として評価を経験する
- その期間は、サブ評価者として評価制度を経験する
- サブ評価者として1on1を行い、被評価者と信頼関係を構築する
【Q5】期中に、メイン評価者を変えることは OK?
【A】OK
組織・役割・仕事が変わったり、入退社の関係で、メイン評価者を変えたいという声が挙がることがあります。
基本は、被評価者と最も関与があり、評価できる方がメイン評価者になるべきと考えているため、期中の変更は可としています。(サブ評価者も同じく変更は可)
ただし、2名のメイン評価者がいるため、最終評価の決定方法は別途設計する必要があります。
【Q6】職種(専門性)が異なる人が、メイン評価者になるのは OK?
【A】No だが、そうせざるを得ないケースも有り
評価の納得感には、被評価者とメイン評価者の信頼関係が必要です。
その信頼関係をつくるには、「能力」への信頼と「人間性」への信頼の2つの側面があります。
前者の「能力」への信頼に専門性は、欠かせません。
よって、職種が同じで専門性の価値を的確に評価できる人がメイン評価者であるべきです。
ただし、例えばコーポレート部門は、多様な専門家が集まる集団のため、上記の考え方が合致しないことも起こります。
ここは「しょうがない」のスタンスで、「人間性」の部分で信頼関係をつくりながら、納得感高い評価を追及していきます。
【Q7】お互いがメイン評価者として評価し合う体制は OK?
【A】なるべく避けたい
A (回答)の歯切れがだんだんと悪くなってきました。
No とは言い切れない微妙な問いです。
人なので感情があります。
この点を考えると、双方向でメイン評価することはリスクが大きい。
なるべく避けたい、と伝えて判断は上長に任せます。
話し合った結果としては「やはり、お互いをメイン評価者とするのはやめよう」となるケースが多いです。
【Q8】被評価者本人に、評価者について意見を求めるのは OK?
【A】OK
被評価者の意向を反映させるという意味ではありません。
会社が考える評価者の体制について、一部に自信がもてない・わからないことについて、被評価者本人に意見を聞くという意味です。
「聞いたからには意見を反映させないと」といった声もありそうですが、そこは事前説明を通じて期待値調整します。
被評価者が、そもそもこの評価者に納得しているか、は重要。
体制に納得感がなければ、評価結果に関係なく、評価制度への不信につながります。
大半の場合、被評価者に意見を求める必要はないと思いますが、「これは悩ましいな…」という場合は、被評価者と話し合うのも1つの手です。