被評価者が、いかに自分への評価に対して納得感をもてるか、は重要なテーマ。
納得感というものは、高評価を与えれば生まれるものではないところが、また面白いもの。
組織サーベイを評価の時期に合わせて実施すると、高評価でも納得感をもてていないケースもあれば、低評価であっても納得感をもてているケースもある。
(組織サーベイでは「今回の人事評価に納得していますか?」「Yes/No/Yesとは言い切れない」と質問します)
では、評価の納得感を高めるために、どうすれば良いのか。
残念ながら、これをすれば必ず評価の納得感を高められるとは言えない。
なぜなら、それは相手の気持ち(感情)の問題であり、こちらが100%コントロールできるものではないので。
ただし、納得感を高めるために効果的な取り組みはあるので、それを自分なりにまとめてみました。
「この人に評価されるなら」という状態をつくる
「この人」というのは評価者のこと。
意外と気を配られていないと思うのが、評価者の選定。
自分がクライアント企業のマネージャーやメンバーにヒアリングした際、評価者について「自分をしっかりと見てくれている人に評価されたい」という声をよく聞く。
「当然でしょ」と思う方もいると思うが、案外そうなっていないケースも多い。
大企業的な仕組みを盲目的にスタートアップでも運用してしまうと、評価者の定義が「一次評価者・二次評価者・最終評価者」となっている場合がある。
例で言うと、一次評価者=課長、二次評価者=部長、最終評価者=担当役員のイメージです。
自分(被評価者)を一番見ているのが一次評価者である課長。
課長がつけた評価を部長が調整し、それを担当役員がさらに調整して決まる。
規模が小さいと二次評価者がいないこともありますが、一次評価者と最終評価者の体制はよく見かけます。
要するに自分の仕事・成果をほとんど見ていない人が、調整を含めて最終評価を決定することになります。
見ていない人(担当役員)の評価を見ている人(課長)がフィードバックするのだから、納得感を醸成することはなかなか難しいものです。
この結果、 「自分をしっかりと見てくれている人に評価されたい」 という声が出てきます。
また評価者の選定という点で、機械的に組織図だけに基づいて決めているケースもあります。
これで問題ない場合もあるが、「この人(被評価者)はこの人(評価者)に評価してもらった方がいいかも」という意見があったり。
こうした意見を一つ一つ丁寧にくみ取ると、そう簡単に評価者が決定しません。
人間の本能として、こういうマッチングをしたり、配置をしたり、と妄想することは大好きなんだろうなと思ったりもします。
また、被評価者本人が誰に評価されたいか、という視点も抜けがち。
評価者を決める立場の見方と評価される立場の見方は異なるので、被評価者に評価が始まる前にきちんと「なぜこの人が評価者なのか」を伝える機会を設けることも大切です。
被評価者がそこで異論を述べれば、その理由を聞き、再度検討することもOK。
検討の結果、評価者を変えることも実際にあります。
結局のところ、納得感は信頼関係で決まる
「この人」で大事なことは、信頼関係。
結局は信頼関係なのだが、その「信頼」とは何か、ここがポイントです。
山岸俊男さんの『信頼の構造』を参考にしました。
信頼には、大きくは2つの要素があり、1つは能力に基づく信頼、もう1つは人間性に基づく信頼。
能力とは、簡単に言えば「この人の技術は、やっぱりすごい」「この人の営業力にはかなわない」「この人みたいなマネージャーになりたい」と思えるかどうか。
スタートアップの組織だと、多様な専門性をもった人材がチームとなってお互いの強みを活かした組織になるため、自分と同じ専門性で比較すると評価者より被評価者の方が「上」であることは一般的だが、専門性だけでなく、仕事の仕方やモノの考え方、成果の出し方、リーダーシップ、コミットメント、人的ネットワーク、などの総合力で「すごい!」と思えるかどうか。
創業時からいた人という肩書きだけで評価者のポジションに居座れば、想像の通り、能力に基づく信頼関係は生まれません。
もう1つの人間性は、仕事に直接関わる能力や専門性というよりは「人としてどうなの?」といった部分です。
人間的な魅力にあふれ、一緒に仕事がしたいと思える人。
この人間性は、「HRT」に置き換えられるかも、と思っています。
評価者を選定し続ける
自分の経験上、評価制度がうまく回っている会社は、評価者選定に時間をかけています。
期初の選定だけでなく、期中の臨機応変な変更にも、対応するには時間がかかります。
もちろん時間をかければいい、という話ではありませんが、常に「この評価者は正しいか」という視点で制度運用すると、事業や組織の変化に応じて、制度運用をタイムリーにチューニングする必要が生じます。
こうしたチューニング、まさに今できていますでしょうか。
自社の運用体制について、今の評価者は最適か、被評価者にとって納得できるか、を早速振り返ってみるものいいかもしれません。