目標設定の方法についてググると、SMART の法則が出てきます。
確かに SMART の視点で目標設定することは必要ですが、SMART の前に意識しなければならないものがあります。
等級要件です。
SMART とは?
- 【Specific】具体的:何をやるか、マネージャーと本人と認識は揃っている?
- 【Measurable】測定可能:設定した目標を振り返ることができる?評価できる?
- 【Achievable】達成可能:無謀な目標でない?本人が達成できそうと前向きになれている?
- 【Related / Relevant】経営目標/組織目標との関連:その目標を達成すれば経営目標/組織目標の達成にも貢献できる?
- 【Time-bound】期限がある:いつまでにやるか決まっている?
それぞれの頭文字を考えて、SMART です。
この SMART の観点を踏まえて目標設定することで、成果創出を促します。
もし、SMART でない目標が設定されていると、次のような事態に陥ります。
- 抽象的で何をやるか分かっておらず、結局着手されない。着手されてもマネージャーの認識していたアウトプット・成果と異なる
- 測定できず、振り返りができない。良かったのか・ダメだったのか、の判断がつかず、結果に対する認識合わせ、改善に向けた対策を検討することが難しい
- 達成可能性が低い目標に対して、メンバーはそもそもやる気を失ってしまい、目標が形骸化する
- 目標は達成したが、メンバーの個人的な成果(メリット)にとどまり、会社やチームの成果としては貢献度が低い
- 期限が決まっておらず、着手されない
余談ですが、ググってみると「R」には色々な解釈があると知りました。Related や Relevant といった「R」の定義から、意味合いまで様々です。解釈にブレがあるようです。
話を戻すと、SMART が全く必要ない・役に立たない、と言いたいわけではありません。
目標設定の質を高めるために、分かりやすいフレームワークであり、実践的だと思います。
ただし、目標設定 = SMART で理解すると、本質を見落とす懸念があります。
等級要件に基づいて目標設定する
人事制度が導入されている会社では、等級要件(もしくはグレード要件)があります。
人材を能力等の基準でレベル分けし、報酬水準の根拠となる制度です。
この等級要件こそ、会社の「期待」が言語化されており、目標設定の基準になります。
大事なことは、会社の期待すること(基準)が明示された等級要件に基づいて目標設定すること。
話の順番としては「目標設定は、等級要件に基づき設定します」が先に来て、その後に「SMART の観点で目標設定したり、設定された目標を振り返ります」が、しっくりきます。
この等級要件の解説が抜け落ちている中で「目標設定といったら SMART 」は、危険な香りがします。
等級要件が基準となることは当然なので、説明が省略されている可能性もありますが、人事制度がそこまで理解されているとは思いません。
こうした理解活動は、細部にまでこだわることをおすすめします。
「必達目標」という言葉…
話はそれますが、目標設定に「必達目標」「チャレンジ目標」といった枠組みを見ることがあります。
この枠組みを、スタートアップが全社的に採用することは避けた方がいいと思います。
売上数字を目標にもちやすいセールス職には当てはまるかもしれないけど、エンジニア職やデザイン職には当てはまらないという意味で、全社的な制度にはしない方がよいと考えます。
セールス職が現場単位の運用で「必達で行こう!」とコミュニケーションすることは出てくるかもしれませんが、エンジニア職やデザイン職の職業文化に「必達」はマッチしないですね。
こういう制度があるだけで、組織が興ざめすることがあります。
想像以上に副作用が強いので要注意。
そもそも目標って、必達できるなら設定する意味ないし、必達でない目標の重要性も相対的に下がるので、あまりいいこと少ないと思います。
世の中、「必ず」とか「絶対」って言えないと思うんですよね。
ちなみに精神論でやるなら、制度でなく、コミュニケーションやカルチャーでやった方がよっぽど効果的です。
おすすめはしているわけではありませんが。