前日の記事で「カルチャー・バリューとは何か?」を考えました。
カルチャーは、暗黙の仮定であり、行動である。
そしてバリューは、カルチャーの一部であり、言語化された価値基準である、と。
今回は、そもそもスタートアップで「なぜバリューが大切か?」、その理由について考えます。
スタートアップでなくてもバリューの重要性はもちろんありますが、特にスタートアップで重要性が際立つ背景について、共通認識がもてると良さそうです。
急成長が求められる
ベンチャー企業とスタートアップ企業って何が違うんだろう、と疑問に思いました。
そのとき『論語と算盤と私』という本で、スタートアップは急成長が求められる。この点がベンチャーとの違い、とありました。
その急成長を実現するためには、圧倒的なスピードが必要です。
そのスピードに貢献するのがバリュー。
バリューは、認識・思考・判断・行動のスピードを上げ、トライ&エラーを高速化します。バリューが公式な価値基準として、判断や行動に迷った際の指針になります。
不要な承認プロセスをなくし、自律的で機敏な組織をつくるためにバリューは大切なのです。
もちろん、スタートアップらしく「エイヤー!」で判断・行動することも、たくさんありますが。
多様な人材でチームが構成される
スタートアップは、専門性で貢献できる即戦力人材を中途採用することで仲間を集めます。
専門性もバックグラウンド、それこそ価値観も異なる多様な人材を、採用活動の中で見極めていきます。
社会人1社目が異なるメンバーで構成されるチームの多様性は、新卒採用で構成されるチームとは全く異なります。
ポジティブな創発も期待できるし、ネガティブなコンフリクトも日常です。
そこにバリュー(価値基準)がないと、コミュニケーションに時間もストレスもかかってしまいます。
新卒採用で何十人、何百人も採用して、新入社員研修からスタートする組織では、バリューがなくても「暗黙の仮定」である強固なカルチャーがあります。「伝統」と呼ばれたりしているかもしれません。
こういう組織では、敢えてバリューを強調しなくても、組織は自然と「右に倣え」ができるようになります。
スタートアップは、こうはいきません。暗黙の仮定は存在せず、これから一緒につくっていく環境です。
そのためにも言語化されたバリューで判断・行動の基準を示すことが大切です。
アトラクトの決定打になり得る
スタートアップの人事において、最重要な領域は何か。
採用です。
ビジョン・ミッションの実現に貢献できる人材を採用すること。
そのためには、能力・マインドだけでなく、自社との相性も必要です。
いわゆるカルチャーフィットってやつです。
ただし、スタートアップでは暗黙の仮定としてのカルチャーがまだファジーな状態。
何となくの相性、というカルチャーフィットをお互いに見極めることになります。
これは難易度高です。
そこでカルチャーの一部であるバリューを言語化し、具体的な仕事の仕方、モノの考え方までイメージできるようにすると、見極めに役立ちします。
さらに、バリューが相性の見極めを超えて、アトラクト(魅力付け)に繋がるケースも多く見てきました。
スタートアップに入社するための理由として、ビジョンやミッション、事業やプロダクト、人や組織、インセンティブ等があります。
ここにバリューが入るとアトラクトの力がより一段増します。
ミッションに惹かれた、プロダクトの社会的価値が高い、いい人が多い、SO。
ここに「価値観」がしっくり来る。
自分を納得させる入社理由として、決定打が揃ってきます。
カルチャーフィットを判断する前工程であるバリューフィット、もしくは価値観マッチ。
これを実現するためにもバリューは大切です。