等級の上げ・下げ、つまり昇格・降格の判定に使用するツールとして等級判定シート(スプレッドシート)があります。
以前に紹介した昇格候補制度、等級定義には複数の軸として「能力/スタンス」「バリュー体現」「成果」の3つを設定した場合の等級判定シートについて考えてみます。
昇格条件の言語化
評価者が集まる会議体(等級会議)で、昇格候補者を口頭で選出します。
細かい条件は抜きにして「この人は昇格候補で問題ない」「昇格できるか微妙なところだけど、今期チャレンジさせたい」「まだ今期は難しい、1年後に昇格させるぐらいがちょうどいいかも」といった議論がなされます。
そして、昇格候補者に選出された方について、等級判定シートを使って昇格条件を上長(メイン評価者)が言語化します。
「能力/スタンス」「バリュー体現」「成果」の3つについて、例えば2等級から3等級への昇格であれば、3等級の等級定義を満たしていると言えるために求めること(期待すること)を言語化します。
「能力/スタンス」の3等級の定義が「自ら課題を発見し、方針を理解した上で主体的に業務を推進できる」であった場合、その昇格候補者の仕事や役割に基づき、上長が翻訳します。
被評価者と擦り合わせも行い、上長と被評価者の双方が腹落ちできるようにコミュニケーションします。
その後、2回目の等級会議で昇格条件を確認しながら、昇格候補者を最終決定します。
すべての等級定義を満たすことが必要
昇格について制度設計・運用する過程で、よく質問されることがあります。
「等級定義はすべて満たす必要がある?」です。
例えば、能力/スタンス、バリュー体現、成果、という3つの等級定義で構成されている場合、3等級に昇格するには、3等級の3つの等級定義をすべて満たす必要がある?という意味です。
質問の意図として、3つすべて満たしていないが、どれか1つがとびぬけて良かった場合でも昇格できないのは問題ない?ということです。能力/スタンスは4等級、バリュー体現は2等級、成果は3等級と判定された場合、等級判定は「2等級」となります。一番下の数字(等級)に引っ張られます。
「これで本当に良い?」という質問です。
自分の意見は、Yes。
どれか1つでも欠けていたら昇格できない、というルールです。
等級定義は、必要な要件を絞って定義しています。制度として、能力/スタンス、バリュー体現、成果、を求めると決めたら、すべてを求めることがシンプルで分かりやすい。
また個人の等級は全社公開する前提のため、「なぜ、あの人が3等級なのか?」という疑問や不満を防ぐためにも、すべての等級定義を満たすことを求める方が効果的です。
自己判定は?
自分の経験上、昇格判定で自己判定は実施する制度をつくったことはありません。
自己判定しない理由は、主に
- 等級定義は抽象的ゆえ、自己判定が難しい
- 振り返りの期間が長いため、自己判定が難しい
- 等級は、会社(上長・メイン評価者)が決めるものというスタンスの表明
です。
評価制度では、自己評価を実施します。評価基準は判断・行動まで具体化(言語化)され、評価期間も3-6ヶ月と決まっているため、振り返りは(等級判定に比べると)実施しやすいと考えています。
ただし、「自己判定をしない方が良い」と強く言えるほどの理由でもないかも、とブログを書きながら気づきました。自分の中でも明確な判断基準や思想の詰めが甘いということです。これまで自己判定は無かったという経験に流されているかもしれません。
自己判定しない制度は、自分として問題はないと思っていますが、自己判定を導入したケースがないので自信をもって強く主張するまでは至らないことが分かりました。
感覚的な部分が強いかもしれません。改善として、自己判定する案を提案してみようと思います。もちろんクライアントさんの考え・意向が優先ですが、実践の場でどういうメリット・デメリットがあるかを考えてみたいと思います。