マネージャー任命に悩みがないことは、少ないと思います。
ドラッカーの名言がありました。
昇進人事の成功は少ない
プロフェッショナルの条件 ーいかに成果をあげ、成長するか
ここまで明確に言い切っているのが、ドラッカーらしいです。
ドラッカーの話をもう少し丁寧に引用すると
私は新しい仕事を始めるたびに、「新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないか」を自問している。もちろん答えは、そのたびに違ったものになっている。コンサルタントの仕事を始めてから50年以上経つ。いろいろな国のいろいろな組織のために働いてきた。そして、あらゆる組織において、人材の最大の浪費は昇進人事の失敗であることを目にしてきた。昇進し、新しい仕事をまかされた有能な人たちのうち、本当に成功する人はあまりいない。無残な失敗例も多い。もちろんいちばん多いのは、期待したほどではなかったという例である。その場合、昇進した人たちは、ただの凡人になっている。昇進人事の成功は本当に少ない。
プロフェッショナルの条件 ーいかに成果をあげ、成長するか
そして、その原因と対策として
新しい任務に就いても、前の任務で成功していたこと、昇進をもたらしえてくれたことをやり続ける。新しい任務で成功するうえで必要なことは、卓越した知識や卓越した才能ではない。それは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において重要なことに集中することである。
プロフェッショナルの条件 ーいかに成果をあげ、成長するか
「昇進人事の成功は少ない」と、本当に思います。
マネージャー任命のポイント
組織は「人材」ではなく「戦略」から設計されます。戦略が変われば、組織も変わり、必要とされる人材も変わります。
スタートアップのように成長に合わせて柔軟に「戦略」も「組織」も変わっていく状況では、組織が硬直化することは避けたいものです。
この前提を踏まえて、マネージャー任命のポイントを考えてみました。。
・役職と給与は分離させる
役職を外れたとしても、給与が下がらないようにします。
役職手当を固定額でつくるのは、まずやめた方が良いです。「給与が外れるから役職を外せない」「役職を外すと給与も下がるので退職リスクが高まる」といったことが起きます。
役職はあくまでも戦略から導かれた”その時の”組織に必要とされる役割であり、変わることを前提としておいた方が良いという考え方です。
・マネージャー教育を実施する
意外とやっていないケースが多いです。
マネジメントは1つの専門性です。考え方からスキルなどのテクニカルな部分もあるし、心構えも学ぶことがたくさんあります。
まずはセオリーを学び、実践を通じて自分たちなりのマネジメントを確立していくことも大切だと思います。
・マネジメントポリシーをつくる(言語化する)
セオリーを学び、実践を通じて自分たちのマネジメントが見えてきたら、それを言語化して全社で共有します。
スタートアップでは様々なバックグラウンドのメンバーで構成されるので、どうしても前職の価値観に引っ張られがち。
自分たちの組織では、どんなマネジメントを目指しているのか、を知ることが組織の一体感や自律性を高めたりします。バリューと似ています。
・振り返りを仕組み化する
チームごとに組織の状態を見える化する組織サーベイを実施したり、人事が全社員と1on1を実施して声を吸い上げたり、マネージャーが機能しているかどうかを定量的・定性的に振り返ります。
大事なことは、振り返った結果、どう関係者にフィードバックしていくか、どう改善していくか、につながていくこと。
必要であれば、改善策を人事が一緒に考えたり、マネージャー全員で改善策を実践します。
振り返りが”やりっぱなし”に陥らないように注意します。
・1on1を仕組み化する
多様な人材がスピーディな環境の中で、会社と共に成長していくには1on1が便利です。
その1on1もいろいろなやり方がある中で、効果にバラツキが生じやすい施策です。
マネージャーとしての役目を果たすために必要な中身(時間・頻度・スクリプト・ツール等)を会社が決めて、まずはそれを実践することをおすすめします。
マネージャー任命の不安は的中する
マネージャー任命について相談された際、「そのマネージャー任命に、不安やリスクはありますか?」と聞きます。
というのも、問題になるマネージャー任命は、事前にこの不安やリスクを、他のケースよりも強く感じているケースが多いからです。
組織のもろもろの事情からマネージャーに任命されると、多くのケースで問題が起きます。
マイナスの直感は、当たります。
こうしたケースではポストは空席にして、兼務で一時的にしのぐ & マネージャー採用に全力を注ぐことが1つの対策だと思います。