360フィードバック(FB)をやってみたいけど、過去にうまくいった経験がないと聞く機会が多いです。運用の負担が大きい、FBされた内容があまりピンと来ない、給与に直接反映されることに納得感がない、当たり障りのないFBで意味が費用対効果が低い、などの理由です。
そもそも360FBの目的は何か?その目的を果たすための方法とは?まず試してみたい360FBを考えてみます。
目的は、フィードバックされる人の ”気づき”
端的に言えば、”気づき” です。その気づきが、本人の成長や仕事の改善、さらにはモチベーションに繋がります。
日々の仕事や通常の人事評価では、気づけないことがあります。これは改善すべき悪いことだけでなく、自分の良いところに気づくということでもあります。
少し話はそれますが「360フィードバックをやります」というと「改善すべきことをフィードバックすること」、つまり自然とネガティブな内容になりがち、と思う人が多いです。それは違います。相手の気づきのために、自分の思っていることを伝えることが360フィードバックです。
目的に沿った360フィードバックのやり方
気づきを得るために、どういうやり方がいいでしょうか?
- フィードバックされる本人が、フィードバックする人を選ぶ
(結果として匿名式ではなく、記名式になる) - 選択形式ではなく、コメント形式でフィードバックする
- 給与に、直接的に反映させない
唯一の正解ということではないですが、この3つは”気づき”を得る、且つ初めて360フィードバックを導入する際の運用負担を下げる方法としておすすめです。
フィードバックされる本人が、フィードバックするを選ぶ
人事部や上長が選んではいけません。フィードバックされる本人の納得感を下げる一因になります。本人が「この人がフィードバックするの?」と思われたら、フィードバックする方もされる方も時間の無駄になります。成長や改善のために「誰から」フィードバックをもらうことが最善なのか、を自分自身で考えることも気づきに繋がります。
「自分で選ばせると仲の良いメンバーだけからのフィードバックになるのでは?」という意見を頂きます。特に問題ないです。自分が信頼するメンバーから公式なフィードバックコメントをもらうことは、本人の気づきにつながります。
また自分でフィードバックする人を選ぶと、匿名式ではなく記名式になります。
記名式にする主な理由はこちら。
- フィードバックの内容で分からないことがあれば、フィードバックしてくれた人に質問できる
- フィードバックしてくれた人に、直接感謝を伝えることができる
- フィードバックする人の責任感が増す(適当なフィードバックをしない)
基本的に性善説に基づいていますね。
選択肢形式ではなく、コメント形式でフィードバックする
ここでいう選択形式とは、例えば「たとえ意見が違っても、私の意見を尊重してくれる」というような基準(質問文)に対して「そう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「ややそう思わない」「そう思わない」等を選択してフィードバックすることです。
この選択形式は「評価」のニュアンスが強く、フィードバックされる本人が結果を素直に受け入れるよりも、反論の姿勢になってしまうことが問題です。
また、こうした選択形式の場合、フィードバックする人(回答者)を3-10名など複数名設定して、平均化することも一般的です。ただし、この平均の数字を読み取ることは難しく、人によって気づきの質にバラツキが生じてしまうことも懸念されます。
質問文の設計や結果の集計も負担が大きくです。
まず試してみる方法としては、KPT(Keep・Problem・Try)でフィードバックする方法を推奨します。ここで1つポイントを付け加えると「Problem」をなくしてKTだけでフィードバックすることもおすすめです。
Problem の改善策として Try が挙がることが多いため、あえて Problem をフィードバックさせずに前向きな Try をフィードバックすることで、お互いにフィードバックしやすいフィールドを作っています。
運用の負担も考え、フィードバックする人は2-3名としています。
給与に、直接的に反映させない
あくまでも目的は、本人の気づきです。給与を決めることを、360フィードバックの目的とは定義していません。給与に反映させてはいけません。これ以上でも、これ以下でもないのです。
360フィードバックは、もっと盛り上がりそう
360フィードバックを実施している会社は少ない印象です。費用対効果の観点だけでなく、導入の副作用が強過ぎることへの懸念があるように思います。この点は否めません。ただ、この先2-3年を考えると、360フィードバックを効率化するツールはおそらく出てくる中で、きちんとした設計がなされれば、もっと一般化しそうな取り組みに感じます。
個人的には様々な実践を積んで、360フィードバックのセオリーをつくっていきたいと思っています。