何人になったら人事制度を入れる?

人事制度、特に評価制度を、組織が何人ぐらいになったら導入すべきか悩むことが多いです。

会社として制度が必要そうだけど、ルールでガチガチにしたくないし、でも社員からは「評価制度ありますか?」「給料って上がりますか?」は聞かれるし… といった背景です。

若くして起業した経営者は、会社員として人事制度が適用されたことがないことも多いです。公式に評価されたことがなく、社長の一存で給料がガツンと上がったぐらいのイメージかもしれません。一方、大企業で経験を積んだ起業家は、年功的な人事制度に非合理を感じているケースもあります。

あまり好印象を持たれにくい人事制度を、経営者としていざ主体的に導入しないといけないとなった場合、まず最初に悩むのが「いつか?」です。

10-20人の組織規模で人事制度を導入できると良さそう

自分の経験では、10-20人は比較的早い時期です。30人前後や50-100人規模の組織で人事制度を導入することもありました。

10-20人の比較的早い時期に人事制度の導入を薦めている理由は、主に3つです。

  1. 人事制度導入のハードルが下がる 
  2. 早めに人事制度を検証・改善できる
  3. 採用活動に貢献できる

 

1. 人事制度導入のハードルが下がる

スタートアップの10-20名を初期メンバーとした場合、この方々は会社のVision・Mission、事業の将来性や影響力、または創業者やその仲間に強い魅力を感じて入社してきます。「成功したい/貢献したい」という思いが強く、信頼関係が短期間で出来上がっています。

そのメンバーに対して、背景の説明やヒアリングの機会等、きちんとしたプロセスを踏み、人事制度を導入しようとすれば反発はほとんどありません。むしろ、「こういうことは早くやった方が良い・会社は社員のことをしっかりと考えてくれている」と前向きな声が出ます。

一方、社員数が増えてくると、ヒアリング対象者が増えたり、説明会/Q&Aが増えたり、また「そもそも評価とは~」「マネージャーは評価されない?/360評価はない?」「前職では~」といった声が増えます。1つ1つの声に耳を傾け、必要に応じて対処する必要が生じるので、時間も負担も増えます。

大事なことは、これはまだ導入のタイミングであることです。まだ運用しておらず、やってみて色々と改善するまでに時間も負担もかかることがもったいないと思うことがあります。

 

2. 早めに人事制度を検証・改善できる

人事制度は導入前の設計はもちろん大事ですが、それ以上に導入後の運用がすべてです。良いものをつくっても、うまく使われなければ意味がありません。

人事制度を導入した後、実際にメンバーの等級を決めて、目標設定や評価を行い、給与を改定してみる。この一連の流れの中で、制度設計の課題や運用オペレーションの課題など、様々な課題が見つかります。A社でうまく機能する制度もB社では違和感が出る、ということはあります。

例えば評価期間が3ヶ月なら年4回、6ヶ月なら年2回の制度改善の機会があります。ここで人事制度のチューニングを繰り返します。等級要件や評価基準、配点、評価記号、昇降給テーブル、評価シート、評価スケジュール/評価フロー、評価調整会議のアジェンダと時間配分など、多岐にわたります。私の感覚では、約2年ほどチューニングを経て、やっと人事制度がフィットしてくる印象があります。

このチューニングを経た人事制度で、事業成長した100-200名ほどの組織で運用できていると人事制度がうまく機能している自信を持てます。10-20名の比較的早い時期に人事制度を導入することの一番のメリットは、ここ(100-200名の組織規模で人事制度をうまく機能させること)かもしれません。

 

3. 採用活動に貢献できる

10-20名の組織では、全力で採用活動に取り組んでいます。この採用活動に、人事制度が貢献できていることをクライアントから聞く機会が増えました。

採用したい候補者から、面接の過程で給与や評価について質問された際、ドキュメントで説明することが好意的に受け取られるという話です。候補者の方から「前職の制度よりしっかりしてそう」とお褒めの言葉を頂くこともありました。

現職の給与から下げて入社するケースでは、特に入社後に実績を残せば給与が上がっていく、という公式のルールを見れることは安心材料になります。ご家族への説明にも貢献できていると思います。

 

人事制度を導入すると、もちろん負担が伴う

10-20名の比較的早い時期に、人事制度を導入することのプラスの側面を書きましたが、もちろんマイナス(副作用)の側面もあります。

人事制度を運用する負担です。評価の時期になれば、それこそ初期フェーズでは評価者の人数も少ないので、評価者一人当たりが担当する被評価者の数も多くなります。事業成長だけでなく被評価者の成長も考えながら、目標設定から始まり、給与を決める難しさとストレスに向き合う必要があります。1on1等でお互いの信頼関係をつくりながら、最後は自分で結果をフィードバックしなければなりません。そのための知識やスキルを学ぶ必要性も生じます。

ただし、遅かれ早かれ、人事制度を導入することになるのであれば、断然、早い方が楽です。

Share this…