人事評価に基づく昇給

評価した結果を給与に反映します。給与のアップは評価昇給、ダウンは評価降給と定義します。

今回は、評価昇給について考えます。

よくある質問は、昇給の頻度と水準です。「年間で何回の昇給がある?」、「1回の昇給でどれくらい上げる?」についてイメージが持てるように書きます。

年2回の評価昇給

昇給(給与改定)の頻度は、年2回をおすすめします。

年1回の昇給だとタイムリーな調整が難しく、年3-4回だと単純に給与改定の運用負担が大きく、評価の見極めが難しいため、年2回が「ちょうど良い」という理由です。

スタートアップの採用は、中途採用ゆえ、採用時期や前職給与、人材ニーズによって、同じ実力(≒等級)でも給与差が生じることがあります。「入社時期の違いによる給与差をどう調整する?」で説明した通り、評価昇給や昇格昇給で調整していきます。

昇給が年1回だとタイムリーに調整できず、人事制度に関係ないタイミングで鉛筆をなめる必要が出ます。これをやり過ぎると、給与改定を提案するマネージャーが人事制度を軽んじる風潮になります。さらに給与改定を受ける被評価者側も、人事制度に対して信頼を失っていきます。

給与はロジックだけでなく、感情を考慮しなければなりません。「自分の給与が上がるなら、ルールに基づいていなくても前向きに捉えてくれるだろう」という考えは、組織には通用しません。

年3-4回の場合、単純に運用負担が大きくなることも組織規模の拡張とともに課題になります。

年4回の場合、3ヶ月単位で被評価者の評価を見極める必要があります。3ヶ月で見極められなかった場合、昇給はしません。これをマネージャーから被評価者に伝えるのは、そこそこ重い仕事です。

給与改定のタイミングが多いと、メンバーが期待をもつ回数も多くなります。この期待値コントロールを四半期ごとに組織的に対応することは負担になってしまいます。

金額か、パーセントか

昇給が「金額」で決まるパターンと「パーセント」で決まるパターンがあります。例えば、最高評価で120万/年(10万/月)昇給するパターンと10%昇給するパターンです。

分かりやすさ・伝えやすさを重視して金額で昇給テーブルを設計する、報酬・市場価値は指数関数的に上がっていくのでパーセントスタイルで昇給テーブルを設計する、などのケースがあります。

昇給テーブル(評価結果と昇給額or昇給率の一覧表)は、人事制度を設計する方の経験に影響を受けやすいです。

自分自身が過去に給与改定された際、どれくらい上がったか、金額またはパーセントで改定されたか、によって基準が変わります。昇給テーブルを設計する際、世間水準や採用市場の他に、設計者・設計チームの過去の経験を見える化(言語化)できると、議論の前提となる認識の擦り合わせに役立ちます。

言語化の基準は、4つで十分です。それぞれの評価でどれくらい昇給するのか、を言語化します。

  1. 最高評価
  2. 期待水準
  3. 期待水準を下回る
  4. 最低評価

これを一覧化できると、昇給の最高値、ボリュームゾーンとなる期待値、マイナス(降給)の有無と程度について、認識が揃いやすくなります。

金額か、パーセントか、自分はこの部分について、明確なスタンス(おすすめ)を取っていません。クライアントの経営陣の経験を踏まえて、議論を通じて決めるスタイルです。等級や役職に応じて昇給テーブルを変えることもできるので、各社に合ったテーブルを複雑にならない範囲で設計するよう心がけています。

金額・パーセントの水準

120万/年(10万/月)や10%のような水準は、以下を踏まえて設計します。

  • 会社の支払い能力
  • 人材マネジメントや報酬の考え方(思想)
  • 競合企業
  • 年収モデル
  • 給与改定の頻度(年2回がおすすめ)
  • 世間水準
  • 自分たちの経験

過去に設計したケースでは、最高評価時の昇給額は1万/月~10万/月です。年2回の昇給、すなわち6ヶ月に1回の昇給額です。

会社によって、だいぶ差があることがわかると思います。

唯一の正解はないため、自社の考え方と環境によって設計を進めると同時に、必要に応じて昇給テーブルは変更するスタンスがあっても良いです。一度決めたルールでも、スタートアップでは事業も組織もフェーズが変わるため、その際に柔軟に変更することをメンバーと擦り合わせることも大切です。

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