前の記事でバリュー評価について書きました。判断や行動といった成果までのプロセスを評価する制度です。
今回は、成果を評価する制度(方法)について考えます。
この記事を読んでくださる方は、OKR を目標設定手法を使っているケースも多いと思われるので、OKRベースで成果を評価する制度を考えます。
なお、OKR は社員を評価するツールではない、との声も承知しています。ただ、スタートアップで成果を評価する制度にOKR が比較的適しているので、評価の枠組みに活用してみたいと思います。
ちなみに自分がOKRを知ったのは、前田ヒロさんのブログ「OKR (目標と主な結果)」でした。
OKR で目標設定
Objective を「目指す状態」、Key Result を「目指す状態に必要な結果」と定義します。
Objective は「Key Result の目的」、Key Result が「目標」と言い換えることもできます。
例えば3ヶ月または6ヶ月を評価期間と決めて、Objective を1つと Key Result を複数設定します。複数とは、人によって違いはありますが、経験上の目安では5-10個程度でしょうか。
Objective は抽象的になり、Key Result は具体的になります。Key Result は、振り返りをしやすくするために定量化(数値化)することが推奨されますが、定量化できない・しにくい場合は、定性的な結果目標でも構いません。
Objective の設定は難しいです。被評価者への一定期間の期待を抽象化して言語化するスキルが求められます。Key Result の設定はできるけど、Objective の設定がうまくできないケースも多いです。制度導入のタイミングでは設定された OKR をレビューすることも効果的です。
なお、Key Result は期中に変わる可能性があります。期初に目標設定した後、やってみたら「これ違うかも」とか「もっといいやり方がありそう」とか「こっちやった方が良さそう」が起きます。
その際、柔軟に Key Result は変更できるようにします。目的は、評価ではなく、成果を出すことなので。
評価するのは Objective
期末に評価する際、Key Result をそれぞれ評価します。最終的な個人評価を決定する際に、やってはいけないことは「Key Result の評価結果をスコア化して、合算や平均化すること」です。
理由は、複数ある Key Result は、それぞれ重要度も難易度も異なるため、合算や平均化した結果が、個人の最終評価に合わないことが起きるという点です。であれば、Key Result 毎に重要度や難易度を設定すれば、という意見もあります。しかし、重要度や難易度もやってみないと分からないことが多く、制度として機能しにくいのがスタートアップの環境です。
また、期中に Key Result が変わりやすいこともあり、重要度や難易度を時間をかけて設定しても使われない可能性も出てきます。こうした運用が、制度の形骸化を招きます。
そこで、OKR を評価する際、Key Result の評価結果を参考情報として、Objective (目指す状態)の実現度合いを評価する方法をおすすめします。抽象的な Objective を5-7段階の評価尺度(例:Extraordinary、Excellent、Successful、Improvement、等)で評価します。
Objective は、Key Result の目的でもあるので、どれだけ目的が実現できたか、を評価するイメージです。
評価は納得感、だから1on1
抽象的な Objective への評価で、評価において最も重要な「被評価者の納得感」を醸成することができる?
期中の 1on1 での擦り合わせが肝になります。1on1なくして、納得感はありません。抽象的な Objective を評価するゆえ、期末に限らず、期中にリアルタイムでフィードバックしていきます。この1on1がきちんとできていれば、つまり被評価者と評価者に信頼関係ができていれば、評価にも納得感が出ます。
また、もう1つのおすすめしたいことは中間評価です。6ヶ月の評価期間の場合、3ヶ月経過時に期末と同じように評価します。これは、あくまでも中間地点での評価であり、成果や期待に対するお互いの認識を擦り合わせることを目的とした評価です。
中間地点でお互いの認識がズレていると、期末地点でもズレが生じる可能性が高いです。早めに軌道修正します。
中間評価は、制度運用の負担が大きいので、会社によって取り組みへのスタンスが変わります。ただし、これぐらいのコストをかけないと、評価に納得感をもたせることは難しいことも、自分の経験上、自信をもって言えることです。
納得感は、成果を出すために必要不可欠な感情です。評価することが目的ではなく、成果を出すことが目的です。