伝統的な日本企業の人事制度の特徴を挙げてみました。
全職種共通の等級要件
職種に関係なく、職能もしくは役割で等級要件が設計されています。
職能は抽象度が高くなり、年功的な運用を助長してしまいます。
全職種共通の評価項目と評価基準
課題設定力、問題解決力、人材育成力、情報収集力、協調性、などなど。
汎用的な能力が評価項目となっており、その詳細が評価基準として使われます。
営業職でも経理職でも課題設定は求められるし、人材育成も求められるので、おかしな制度ではありません。
全職種共通の昇格要件
昇格は、評価制度と連動しているケースが多いです。
高評価(SABCDのうち、AやS)を2年連続で取得したら、昇格候補者となり、審査を経て昇格を決定します。
審査には、外部アセスメントや自社設計の筆記試験を実施したり、各社の工夫が見られます。
大事な観点ですが、「等級要件に照らして満たしているか否か」という観点が抜けがちです。
結果、経験を詰めば評価は高くなり、その結果、昇格しやすくなります。
ここにも、年功序列を促す要素があります。
全職種共通の報酬レンジ・昇給/賞与テーブル
事務系と技術系でわかれているケースもありますが、同じケースも未だに多いです。
そして、昇給や賞与についても評価制度と連動させてA評価なら基本給3号俸アップ、B評価なら賞与係数1.0といった具合です。
会社業績連動評価などで賞与がやや複雑になっているケースもあります。
役職手当
昨今、ジョブ型の流れによって廃止のニュースも聞きますが、いまだにその地位を保っているのが役職手当。
課長は月額5万、部長は月額10万などと固定的な手当が上乗せされます。
等級は職能(職務遂行能力)軸で、役職は役割軸で処遇反映するのが、王道的な日本企業だと思います。
20年ほど前に役割軸による人事制度、いわゆるミッショングレード制度が流行り、それでも年功序列のカルチャーは強く、変われないまま、今はジョブ型という職務等級制度が流行っています。
事の本質は、ペイフォーパフォーマンスであり、成果や実績など会社に対する短期~長期の貢献で相手を評価・処遇できるか、がポイントです。
さらに踏み込めば、成果が出なければ報酬を下げられるか、という話。
さらにさらに踏み込めば、成果が出なければ賞与だけでなく、基本給を下げられるか、という話です。
これができない組織では、ジョブ型だろうと役割だとうと、何をやってもダメです。
「下げられないですよね」と無邪気に自己正当化している組織は、変化に追いついていけません。
役職定年
55歳で役職を外すという残酷な制度です。
そこにヒトを見る(評価する)という視点がないわけですから。
55歳という恣意的な基準によって、マネジメントに関するやりがいのある仕事をはく奪されるというムゴい仕組みだと思います。
「余人をもって代えがたい場合は役職定年の除外とする」という但し書きが記載されているケースもあります。
つくづく思います、会社というのは都合のよいな・勝手だな、と。
この制度も廃止している企業が増えているようです。
こういった卑怯な制度は廃止して、フェアな関係をつくることが大事だと思います。
要は、「ポジションを後進に委ねるように組織づくりをしてほしい」というコミュニケーションを、こういった制度で無機的にやってのける魂胆があるわけです。
いかに組織という生態系で、コンフリクトの可能性を排除し、表層的に円滑さを見繕っているかが垣間見えます。
自分は、こういう空気が苦手です。
年長者への敬意を示す意味でも、役職定年はやめた方がいいですね。
人事異動
約5年で異動するなど暗黙のルールが設計されているケースもあります。
勘所は、やはり会社都合で職種・部門・勤務地などが変わってしまうことです。
雇用は協力に守られる一方で、異動は会社都合の権限を認めるのが、日本の法律です。
こういう話をすると、解雇規制にまで話が飛んでいきますが、自分はそんな仰々しいことは言っていません。
自分の仕事は、自分で決める。
ただ、それだけです。