昇格に、メリットはあるのか?

等級制度における「昇格」は、人事制度における重要イベントになります。

昇格によって、成長を改めて実感し、期待も報酬も上がります。

 

この昇格とは、本人にとってメリット、つまり利点なのでしょうか。

 

メリットとは?

メリットとは、利点のこと。

利点とは、利益のこと。

つまり、投下する(投下した)コストより価値が上回っていると定義しました。

 

その場合、昇格に「利益」はあるのでしょうか。

 

「期待」が上がるから「報酬」も上がる

昇格メリットという言葉から、通常の評価昇給より高い昇格昇給がイメージできます。

昇格によって、報酬が大きく跳ね上がることです。

 

ただし、これは「期待(期待値)」が上がるから報酬も上がることを意味しており、昇格前よりも影響度も難易度も高い仕事やミッションに取り組むことを想定しています。

 

昇格によって年収が10%上がったとしても、期待も10%程度上がると考えると、これはメリットがあると言えるのでしょうか。

つまり、価値の観点では上がっているかもしれませんが、同時にコストも上がっており、利益はさほど変わらないのでは、と思った次第です。

 

報酬は上がるけど、期待は上がらないのであれば、昇格によって大きなメリットを得たと言えますが、期待も上がるのであれば、絶対量が変わっただけで、相対的なお得感はないのかも。

ましては、期待が上がり、今までできていたことが難しいレベルで期待され、四苦八苦する状況を考えると、報酬が上がったとしても嫌がる人は、そこそこいるのではないでしょうか。

 

要は、損得勘定って、どうなんだ?

別の言い方をすれば、損得でモノゴトを考えた場合、昇格ってどうなんだって話かと思います。

「得」だから、昇格を目指そう、と思っている方はどれくらいいるのか。

もちろん人事制度上で期待や成果に対して適切な報酬が支払われていることは前提条件ですが、それを「得」と捉えて、昇格にモチベートされることはあるのでしょうか。

 

「ない」とは言えません。

しかし、昇格していく方を見ると、影響度も難易度も大きな問題を解決すること自体にモチベートされるわけであって、結果として報酬がついてくる状態になっていると思います。

 

人によっては、権力欲や地位にモチベートされて、昇格(もしくは昇進)を目指そうとする方もいるわけですが。

 

人事制度が個人の成長を阻害することがないように設計・運用することは最重要である一方で、あまり損得勘定の意識を強めてモノゴトを語ることも、若干の違和感を感じてしまいます。

 

「コストパフォーマンスを求めて得したい」という状態に陥ると、個人も組織も成長が鈍化してしまいます。

「報酬は後からついてくる」という安心感・信頼感を形成し、制度もそれを担保して、あとは問題解決に集中できる環境を、経営やマネージャー、人事でつくりたいものです。

 

Share this…