スタートアップは中途採用で組織づくりを進めます。
採用基準は、自律自走できる人材で、等級制度の「型」に当てはめると3等級のレベルです。
この採用した人材の入社時の等級の取り扱いについて、仮等級・本等級の仕組みがあります。
入社時の等級は、仮とする「仮等級」の仕組み
入社時の等級について、仮として3ヶ月経過時に必要に応じて変更できる余地を残していくのが仮等級の仕組みです。
3ヶ月経過時に決まる等級を本等級と呼び、これが通常の等級になります。
結論を言ってしまうと、仮等級から本等級で等級が変わる(上がる・下がる)ケースは、稀です。
1-2%程度の所感です。
3ヶ月としているのは、自分が関与してきた多くのスタートアップで試用期間が3ヶ月のため、試用期間と合わせて運用できるように3ヶ月としました。
試用期間が6ヶ月の場合、仮等級の期間を6ヶ月にします。
※試用期間については、こちらを参照「試用期間は、どうやって運用する?」
仮等級の仕組みの狙いは?
なぜ、1-2%のために仮等級の仕組みを運用しているか、という質問には、主に2つの理由があります。
1つ目は、入社後の働きぶりを実際に見て、入社時に決めた仮等級に違和感に感じた場合、早めに対応できるようにするためです。
入社時の等級判定は、保守的に進めることが鉄則。
一緒に働いたことのない相手を評価することは簡単なことではありません。
3等級か4等級で迷ったら、下の3等級でオファーする。
2等級と3等級で迷った場合も同じく下の2等級でオファーする。
入社後に昇格させるよりも、降格させる方がよっぽど難しいため、保守的な等級判定が採用時にはマストです。
「迷ったら下の等級でオファーする」が合言葉です。
そして、入社後に一緒に働く中で「3等級か4等級で迷ったけど、十分に4等級の実力を持っていた」と自信をもって説明できるならば、早めに昇格できるようにする。
それが仮等級の仕組みです。
実際に本等級の判定で等級が変わるのは1-2%かもしれませんが、制度の思想と一貫性を考えると、1-2%の当事者以外のところで貢献度が高い仕組みだと考えています。
2つ目の理由は、入社者に適度な緊張感を共有すること。決して過度な緊張感ではなく、適度な緊張感を制度として組織的に与えることが目的にあります。
もし、期待以上のパフォーマンスが明らかであれば等級が上がり、結果として報酬も上がります。
一方、期待されるパフォーマンスと明らかにネガティブなギャップがあれば、等級が下がる可能性もある。
報酬については激変緩和措置の観点ですぐに減給することは考えていませんが、一定期間(例:6ヶ月や12ヶ月)でギャップを解消できなければ、将来的に減給もあり得ます。
こうした適度な緊張感の共有を、メイン評価者のマネジメント力だけに任せてしまうとバラツキが出て、ボロにつながってしまいます。
制度として仕組み化することで、マネジメント力だけに頼らない状態をつくります。
仮等級の運用プロセス
仮等級の運用について、メイン評価者が実際にやることをまとめました。
【入社1ヶ月目】
- 仮等級の判定理由の説明
- 等級要件を踏まえた目標設定(期待値の共有)
【入社2ヶ月目】
- 日々の仕事の振り返り
- 1on1
【入社3ヶ月目】
- 試用期間チェック
- 本等級の判定
- (等級を変更する場合は、報酬の変更も)
- 被評価者に対する「上位等級へ昇格するための要件仮説」の説明
目先の忙しさに追われて、新入社員へのコミュニケーションや目標設定が放置されないよう、人事からも適宜フォローできるように仕組みをつくります。
例えば、入社1ヶ月面談や入社1ヶ月アンケートなど。
組織サーベイを実施している場合、記名式であれば新入社員の回答を入念にチェックし、気になることがあれば個別に面談を申し込む対応も有りです。
勢いのあるスタートアップほど、毎月の新入社員が多く、運用の負担がのしかかる懸念もあります。
しかし、この取組みは新入社員の即戦力化に貢献できると同時に、人的リスクのタイムリー且つ早急な把握にも役立ちします。
運用は確かに大変かもしれませんが、コストパフォーマンスは悪くないと自信をもって提案できる取組みだと考えています。