賞与って難しい

スタートアップでは、賞与があることによって生じる「悩み」があります。賞与をなくせば、この悩みが解消されます。実際に、人事制度を導入するタイミングで賞与をなくしたケースがありました。

今回は、スタートアップにおける賞与の難しさについて考えてみます。

賞与がある場合の悩み

前提として、スタートアップで見かける賞与は金額が少ないです。月数換算で半期で1ヶ月を切ることが多かったです。半期で2ヶ月といったこともありましたが、稀なケースです。

その上で、実際に賞与を運用していた場合に聞く悩みは、次の2つです。

① 中途採用に有利に働かない

まず採用で悩みが生じます。

賞与があると月給が下がります。

例えば、年収420万の場合、賞与を年間2ヶ月とすると月給は「30万」(420万÷14ヶ月)です。賞与がない場合は「35万」(420万÷12ヶ月)です。この5万の差が、採用に不利に働きます。

同じ420万でも月給の5万の差が出てしまうことは、マイナスポイントです。「賞与があるので年収では同じです」は、通用しません。

「賞与って削られる可能性ありますよね?」に対して、「絶対にないです」とは言えません。おそらくないと思いますが、絶対ではないです。

採用競争が激化しているスタートアップ環境の中で、賞与が足を引っ張ることになってしまいます。

② 「賞与なのに少ない」という声

給与は「論理」ではなく「感情」が先立つため、きちんと説明しても納得感をえられなかったり、飛躍した意見や前提条件が擦り合わない対話で不満が生じます。

年収が下がることは受け入れたとしても、賞与があると不満が出がちです。

前職水準との比較、世間水準との比較がしやすいことが主な理由です。時期的にも夏と冬の年間2回は「今年の賞与の平均は~」といったニュースが (求めていないのに) 流れてきます。わざわざ、寝た子を起こしてくれます、困ったものです。

特に賞与が年間2ヶ月を下回る場合は「賞与なのに少ない」という声が出ます。

また原資が少ないため、評価に応じて変動させようとしても限界があります。そもそも賞与は、業績や評価によって増減することを狙いとした報酬項目ですが、変動の度合いが小さく、逆効果に働くことがあります。

つまり「評価が良かったので賞与が増える」といっても増え幅は微々たるもの。この増え幅に、高評価者は逆にガッカリしてしまいます。少しでも増えれば嬉しい、と思う方ももちろんいると思いますが、スタートアップの初期フェーズにジョインするような方は、どちらかというとガッカリするタイプが多いように感じます。

賞与をやめる

こうした悩みがある場合、思い切って賞与をやめる選択肢があります。

「やめる」というのは、賞与分を月給に含めてしまうことです。年収では変わらず、月給が増えて、賞与がなくなります。先ほどの例で言えば、月給30万を35万に変更して、賞与をなくす。年収は420万で変わらない、ということです。

上記の悩み①と②は解消されます。

①について、賞与がないことで採用力が落ちるという意見も出ますが、このフェーズで賞与を求める方はスタートアップの環境に合っていないと思います。この環境でのインセンティブは、やはりSOだと思います。

②について、報酬の変動性が弱まるという意見が出ます。ただ、そもそも賞与額が少ないため、変動の効果についても懐疑的です。

個人的には、固定給である月給を上げていくことが良いと考えます。4-5年前に比べて、スタートアップの報酬環境は改善されてきましたが、転職時に報酬が下がることは実際にあります。こういうケースに対して、元の報酬水準に早く戻し、追い越せる状態をつくっていくためにも、賞与ではなく(月給の)昇給で対応していくことが望ましいです。

固定給を上げることはリスクと捉えられます。なので、会社にとってリターンが大きくなると考えています。もちろんリスクを下げるように工夫はしますが、月給を上げないというやり方は、スタートアップにとって適切な手法ではありません。急成長に貢献する人材を採用したり、引き留めることが難しくなるので。

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