人事制度ハンドブックを「軽く」する

スタートアップにおける人事制度の「型」として、ハンドブックを作成しました。

 

 

思いのまま記してきましたが、人事制度の運用負担を軽減するためのポイントをまとめました。

 

サブ評価者は任意

評価者体制では、従来の一次評価者・二次評価者ではなく、メイン評価者・サブ評価者を提案してきました。

この考え方そのものに修正が必要とは考えていませんが、様々なスタートアップでのフィードバックを踏まえると、サブ評価者の設置は必須ではなく、任意とすることで制度運用の負担を軽減できることがわかりました。

任意ではなく、思い切って「廃止」にすることも可能です。

 

代わりに、メイン評価者が必要に応じて関係者にヒアリングをするなど、人事評価や等級判定に必要な情報を主体的に獲得しに行くことを依頼します。

この動きは評価者によって差が生じてしまうため、注意が必要です。

ヒアリングのフォーマットを準備したり、関係者ヒアリングの実施期間を明示したり、自然に「動き」を発生するような仕掛けが求められます。

 

行動評価の尺度を減らす

バリューに基づく行動を評価する行動評価。

定量化できない領域であり、日々のフィードバックも必要な難しい評価です。

この評価の尺度を減らすことで、運用の負担を軽減することができます。

 

例えば、加点(プラス)の評価として、従来は

  • 【◎】周囲に良い影響を与えている
  • 【〇】自然に体現できている

という2段階の尺度を設定していましたが、「【◎】周囲に良い影響を与えている」をなくしてしまい、「【〇】自然に体現できている」のみとします。

 

最終的に

  • 【〇】自然に体現できている
  • 【△】体現しようと試みている
  • 【×】体現できていない

の3段階というシンプルな形となります。

 

この尺度だと、減点評価の色合いが濃くなってしまうため、自分としては避けていたのですが、バリュー体現は「できていて当然」というスタンスを貫くのであれば、減点評価も悪くはないなと。

 

「昇格特別昇給」を廃止

昇格した場合、上位等級の報酬レンジの下限まで昇給する仕組みが昇格昇給、さらにその水準から個別に(自由に)昇給できるようにしたのが「昇格特別昇給」です。

要するに、自由度の高い昇給システムで、マネージャーの裁量で提案し、経営や人事で承認を下します。

 

この自由度の高さが運用負担につながるといった声があります。

具体的には、マネージャーが迷ってしまう、昇格特別昇給をどう依頼すればいいか分からない、昇格特別昇給を実施しないメンバーへの説明が難しい、など。

 

一方で、この昇格特別昇給は必要とのスタンスで制度を運用しているケースもあります。

これが無いと、スタートアップへの転職に伴う報酬変動を是正することが難しい。

正確に言うと、是正に時間がかかる、という意味合いです。

 

この点は、人事制度に対するポリシーや運用能力の違いに起因するかもしれません。

よりシンプルに、運用コストを下げたい場合は、自由度の高い制度を取り除いていくことは有効です。

 

降格時の「給与見直し」を廃止

降格時の自由度の高い降給の仕組みが、降格時の給与見直しです。

これも昇格特別昇給と同じロジックで廃止することで、運用コストを下げることができます。

 

しかし、そもそも降格の数が少ないという前提に立つと、そこまでコスパの効く修正案ではないかもしれません。

逆を言えば、この修正案のニーズが強い場合、降格の可能性が多く、そもそも入社時の等級判定に問題があるのかもしれません。

 

ただし、実際のケースがなくとも、新入社員に対する制度説明コストは存在するわけで、その観点で心理的にも少しは軽くなるということであれば、改善の余地は有りと言えるかもしれません。

 

中間評価は「維持」のケースがほとんど

運用負担を考えると、中間評価の廃止が必ずテーマに上がります。

結論、廃止せず、継続するケースがほとんどです。

 

通常の1on1の中で事足りるのでは?という意見に対して、期中での認識合わせを「公式な」プロセスの中で実施することの効用を多くのスタートアップが感じています。

負担は重いけど、その分の効果もあると。

 

私は基本的に中間評価を制度化しているので、最近では中間評価がなかった場合の温度感を把握できていません。

もしかしたら、中間評価は無くても変わらないのでは?という気持ちも全くないわけではないため、思い切って中間評価を廃止して、その結果を考察したいと考えている部分もありますが、なんだかんだで最終的に中間評価は継続されている、といった状況です。

 

正直、トレードオフの関係なわけで、人事制度に対する「意思」の問題になるわけです。

仕組みを通じて、成長を促し、健全さを維持することができるという想像が働く場合は、そこにリソースを投資するわけだし、そう思えない場合は投資できないという話です。

 

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