組織が100人になるまでに、人事制度の観点でやっておきたいこと

組織が100名規模に拡張するまでに、人事制度でどのようなことをやっておくべきか。

組織の状況を踏まえて解説します。

 

マネージャー(評価者)が増えている

100人組織では、組織構造が3階層ぐらいに発展している可能性が高く、ミドルとしてのマネージャーが必要になります。

人事制度が導入された後に入社したマネージャーや社内でプロモーションしたマネージャーなど、人事制度に対する深い知見がないケースも。

こうしたマネージャーが増える中、現場に「任せる」と丸投げしてしまうと、人事に対する納得感が下がってしまう懸念が生じます。

そのため、この状況下に入る前に、人事制度関連のガイドラインを整備しておくことをオススメします。

100名規模であれば、導入した人事制度を2-4回ほど運用していることが望ましいです。

理由は、このガイドラインを設計するためです。

ガイドラインは、実際に運用を経て、現場と人事の声を集めて作成します。

声が反映されていないガイドラインは、机上の空論になりがち。

そのためにも人事制度を早めに導入し、実際の運用から得られた実践的な知見・ノウハウを言語化することが大切です。

 

【やっておきたいこと①】人事制度のガイドライン化

ガイドラインを作成すべき領域は、主に等級判定、人事評価、報酬決定の3つです。

等級判定のガイドラインは、等級判定の仕方と勘所、等級判定シートの書き方(ドキュメンテーション)を重点的に作成します。

昇格候補者制度を導入している場合は「昇格候補者選出の基準」や「昇格条件の書き方」も必要です。

あと現場から声としては昇格候補者であったけど昇格できなかった場合の説明責任の果たし方。

特に、本人に対して「NG」だったことをどのように伝えると納得感を得られるのか、また翌期以降へのモチベーションに繋げられるか、という観点です。

 

評価制度のガイドラインは、評価プロセス(オペレーション)と評価シートの仕方、評価シートの書き方です。

評価プロセスとは、評価面談の目的とコミュニケーションするテーマ、時間配分の目安です。

「ここまで決めるの?」と疑問に思うかもしれませんが、目安が示されることで新任の評価者は安心して評価に望めます。

評価シートの書き方についても、正解はありません。

本質は、被評価者の納得感と会社(経営)への説明責任です。

この2つが果たせれば、それがその会社にとっての期待水準と認められます。

どんな内容を、どれくらいドキュメンテーションしてほしいのか、が事例として共有されると、ガイドラインとして機能してくれます。

 

最後に、報酬決定。

これは昇格昇給の相場観が分かるようにします。

金額に幅があるので、補足説明が必要ですが、実際にどれくらい昇格昇給したのか、がわかると新任の評価者が昇格昇給を提案する際、大きく「外す」ことがなくなります。

この「外す」ことに、評価者はある種の恐怖を感じています。

だから、昇格昇給について「わからない」「どれくらい?」「いくらまでOK?」といった声が上がります。

「自分で考えて決めてください」という人事のメッセージは正論ですが、相手に響きません。

「外す」ことが怖いので。

こちらも本質は、被評価者の納得感と会社(経営)への説明責任。

ただし、評価に比べて報酬は市場価値の観点で、他社比較や市場比較が必要です。

まだこの100名フェーズでは、外部報酬水準リサーチが行われていないケースもあるので、その場合は自社の過去比較で対応するしかありません。

最低限の過去データを整理して、ガイドラインとして共有します。

 

また、この文脈で考えると外部報酬水準リサーチも100名規模になる頃には実施してもいいかもしれません。

見方が分からず、実施したけどうまく活用できないケースもあるかもしれませんが、初回から100%活用するのは至難の業です。

リサーチにも一定の経験が必要なので、300名規模になる前に早めに実施しておくのもいいかもしれません。

 

【やっておきたいこと②】評価システムの導入

100名になる頃あたりで導入できれば問題ないです。

単純に、人事側の運用コストが高まることと現場から声が挙がることが主な理由です。

これは解決策がシンプルで、システム一択です。

システムを入れれば、課題解決できると単純なわけではないのですが、システムをベースにして課題解決していかないと、現場の納得感を得ることができません。

システムは導入時に負担を伴います。

組織規模が300名や500名で導入すると、説明コストが高いので100名ぐらいがちょうど良い印象です。

もちろん費用との兼ね合いなので、まだ我慢すべき状態であれば、スプシ運用でもできなくはありません。

大企業でシステム運用に慣れていると、それこそ評価制度を導入すると同時にシステムを検討する場合もあります。

ただ、議論の方向が制度そのものよりもシステムの話にすり替わってしまったり、制度とシステムの課題の切り分けが面倒なケースもあるので、まずはスプシ運用で制度を検証する方がステップとして適切だと考えています。

そのためにも、人事制度の導入は10名程度で検討を開始し、20名程度で導入できるとベストかな、という自論につながっています。

※参考:何人になったら人事制度を入れる?

 

【やっておきたいこと③】異動方針の策定

最後は、人事異動や配置転換に関する自社の考え方を言語化することです。

100名規模になると、人事異動が発生します。

ポジティブな理由もあれば、ネガティブな理由もあります。

個別最適になりやすいので、会社としての方針を早めに策定しておくことをオススメします。

そして「とはいえ」が必ず起こる領域です。

方針があったとしても、「この人は~だから、今回は~したい」という議論になります。

方針がないと「とはいえ」という基準が不明確になってしまい、将来的に過去事例に影響を受けるケースも発生します。

組織拡張ととも方針がアップデートされることがあると思います。

あくまでも現時点の考え方で問題ありません。

「わからない」から先回しするを否定するわけではありませんが、異動は相手のキャリアや報酬に関する影響度の大きな人事イベントでありながら、軽く考えてしまうマネージャーがいたりもする不思議な人事テーマゆえ、できる範囲で言語化することをオススメします。

  • 提案・承認プロセスは?
  • 異動した際の等級・報酬の取扱いは?(下がる?)
  • 社内周知は?
  • ログ(レポート)を残す?
  • 職種や部門をまたぐ異動は?
  • 本人希望をどこまで反映する?
  • 会社が強制力を働かせる?
  • 本人に異動を提案することは会社として推奨する?

など、色々と考えることがあります。

 

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