NOT A HOTELの事例から読み解く「会社業績連動昇給」は、スタートアップのトレンドになるか?

Nstock社の STOCK JOURNAL に興味深い記事がありました。

私なりに会社業績連動昇給について考えてみました。

 

本論とズレますが、STOCK JOURNAL の記事は本当に素晴らしいです。

何が素晴らしいって、ノウハウや知見の情報提供だけではなく、その情報の元になっている「人」の本質に対して、きちんと取材されていること。

「なぜ」の部分、つまり背景が描かれているので、読み手として多方面にアイデア・考察を膨らませることができます。

本当に、スゴイな、と思います。

 

NOT A HOTELの事例

詳細は、以下の記事を読んでいただきたいのですが、NOT A HOTEL社で運用されている会社業績連動昇給(NOT A HOTEL社では「ワンチーム評価」と定義されています)が紹介されています。

 

 

端的に整理すると

  • 個人ごとの人事評価は、実施しない
  • 会社の業績が達成できれば、全員一律で昇給する
  • 昇給率は、「+3%」または「「+5%」
  • 3ヶ月ごとの面談などもなく、事業に集中できる環境を重視している

▼STOCK JOURNALより引用

 

といった内容です。

 

わかりやすい。

無駄が省かれ、シンプルさを追求した結果、非常にわかりやすく、納得感の醸成につながりやすい制度だと思いました。

私自身、とても見習いたい制度設計のひとつです。

 

さて、この会社業績に連動して、全社員の報酬改定を一律の基準で運用していく方法について、皆さんはどう思うでしょうか?

私は「有り」だなと思いますし、今後、スタートアップのトレンドになっていく可能性を十分に秘めているとも感じました。

 

会社業績連動昇給の本質

会社業績連動昇給の本質を私なりに捉えると、個人の評価・報酬の決定に対する組織的な運用コストの削減です。

個人ごとに決められたフォーマットに基づいて目標設定したり、評価基準に照らして行動や判断を評価してフィードバックしたりする行為の時間と精神的な負担をカットしてしまおうということです。

評価や報酬決定にかかる時間や精神的な負担を減らす代わりに、事業・顧客に集中しよう、というメッセージが込められていると考えています。

 

勘違いしてはいけない点は、「人を評価しない」と言っているわけではない、ということだと思います。

こういうメッセージを出すと、すぐに目新しさに食いつき、解釈を曲げてしまうケースがあるのですが、決してパフォーマンスを見ない(評価しない)と言っているわけではありません。

グレード制度(等級制度)は走っているわけで、グレード変更するために個人の評価はどこかでされているわけだし、そもそも組織づくりの過程でポジションへの配置やジョブアサインメントを検討する上で、個人評価は必然です。

要するに、マネージャー各自の評価運用コストを削減する代わりに、全社業績連動昇給と経営陣(もしくは人を評価する機関)が、そのコストを簡易化して請け負っているという意味合いだと思います。

 

尖った制度ゆえ、好き嫌いがわかれるところかもしれませんが、こうして事前に発信しておくことで、入社する側がその価値観を選択できる状態になっているので、ミスマッチも減らせます。

とても戦略的な制度設計です。

 

会社業績連動昇給を成立させる3つの条件

会社業績連動昇給を導入するには、一定の条件があると考えています。

この条件をクリアできる組織が増えてくると、スタートアップのトレンドになっていくのではないでしょうか。

おそらく、この先3年ぐらいで同じような制度を導入ケースが増えてくるという仮説を持ちました。

 

では、主な条件について、2つ考えてみます。

 

① 個の人材レベルが高い

この制度を運用するには、自らの報酬水準に納得している状態が望ましく、そのためには一定の報酬水準の高さが求められます。

つまり、その報酬水準を渡せるほど、個の人材レベルが高くなければなりません。

いわゆるハイレイヤー人材で組織づくりされていくケースです。

そして、個の人材レベルが高く、その結果として事業に強いレバレッジがかかるような高付加価値ビジネスであることも条件となってきます。

低い報酬水準で、労働集約的に運営していくビジネスへの適用、もしくは低水準でない一方で高水準でもない「どっちつかず」のビジネスにも適用は難しいかもしれません。

 

② ハイレイヤー人材を見極められる

ハイレイヤー人材で組織づくりをしていくためには、組織づくりを担う経営陣が、ハイレイヤー人材か否かを見極められることも必要になります。

「過去に実績がある人」ではなく、自社の急成長ビジネスとそのポテンシャル、さらにカルチャーにおいてハイパフォーマンスを発揮できるか否か、を経営陣が見極められないといけないのです。

その経験を、どれくらいしたことがあるのか。

また、その自信がどれほどあるのか。

 

こう考えると、一部の天才を除き、これができるのは2周目の起業家だと思います。

過去の起業経験があり、それなりの規模まで成長させて、また新たな事業と組織をつくり始めた方。

これほどの経験と自信がないと、組織づくりの初期からハイレイヤー人材を見極め、その活躍を最大限引き出すことは容易ではないはず。

 

また、過去の経験から「人を評価すること」の運用コストの重さを重々に理解しているため、会社業績に応じて一律で昇給することも意外とすんなりと意思決定できそうです。

こういうことは、自ら経験しないとわかりませんので。

 

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