マネージャーがメンバーの年収を決定するために必要な情報は、他のメンバーの年収情報である

報酬決定は、マネージャーにとって大事な職務であり、難しい職務でもあります。

 

報酬決定に自信を持てない

メンバーが昇格し、個別に特別昇給を加算するか否か、つまり年収を再設定する際、マネージャーが「どうやって決めればいいですか?」と質問したり、悩んでいる場面をよく見かけます。

そもそも、どういう理由をもって年収を決定すればいいのかがわからないというケースです。

報酬決定の経験が豊富であり、ある程度の場数を踏んでいれば、「こんなもんでしょう」とエイヤーで意思決定できますが、そうでない場合、本当に自分が(「エイヤー」で)決めてしまっていいのか迷ってしまいます。

大事なことはマネージャー自身が、自信を持って説明できること、そして相手であるメンバーが、その水準に納得してくれることです。

後者の「納得」は相手次第なのでコントロール不可ですが、前者の「自信」はコントロール可能なことなので、何とか自信を持てるようにしたいところです。

 

年収は、相対的に決まる

多くのケースで、マネージャーは自分の配下のメンバーしか年収情報を把握していません。

経営チーム・役員に相当するレイヤーは、全メンバーや担当部門におけるメンバーの年収を把握していますが、チームを管掌しているマネージャーは、自チームだけのメンバーについてしか、情報が共有されていないという意味です。

悩んだとき、上長(役員など)に相談しながら、アドバイスを受けて最終的に年収を決定していくプロセスになります。

このときの「相談」とは何か。

なぜ、上長は有意義なアドバイスができるのか。

それはメンバーについての幅広い年収情報を把握しているという背景があり、相対比較しながら年収を決定できるというポジションパワーが働いています。

もちろん上長の経験値が豊富であり、報酬決定に関する様々な課題を解決してきたという場合もあります。

ただし、本質的には社内における報酬を相対的に見て、考えて、仮説を持てることが自信につながっているのです。

 

とある方と議論している際、『前職でも、マネージャーに「報酬を決めてほしい」と言っても、みんなポカンとしていた。他の多くのメンバーと比較するための情報がなかったのが原因だった』という話をお聞きし、その通りだな、と膝を打ちました。

私は、マネージャーが報酬決定に困る・悩む場面で、その原因を「(マネージャーの)経験値」が主であると考えていましたが、「いや、そうではないぞ」と思うようになりました。

「経験値」ももちろん大事なのですが、その経験がなくても幅広いメンバーの年収情報を共有すれば、それなりに自信を持って年収決定できそうだと考えるようになりました。

まだ、実践を積んでいない仮説ですが、私としては強い納得を感じていますので、これから現場で試していくところです。

 

年収情報は、フロー情報でなく、ストック情報

こう考えていくと、組織づくりの初期フェーズ、例えば30名前後の組織で年収水準を見誤って設定してしまうと、その水準がデフォルト値となって、その後の年収決定に強く影響を及ぼしてしまう可能性があります。

「この人がこの水準なら、これぐらいじゃないと、、、」といったように対本人だけではなく、周囲のメンバーとの相対比較の中で年収決定がなされていくイメージです。

10名、30名、50名、100名へと組織規模が拡張していく中で、初期フェーズの年収決定は特別な意味を持っています。

そこで年収が全体的に低めになってしまうと、その後の採用で苦戦することになったり、途中から年収水準を大きく上げるオファーを始めることで、初期メンバーとのギャップに悩むことになったりします。

そこで人事制度を設計・導入し、ギャップ解消できれば問題は解決できますが、そのギャップを解消していいのか、なかなか意思決定できなかったりします。

一方、年収を全体的に高めにしてしまうと、その後の採用オファーも全体的にインフレ傾向になり、入社後の昇給を「渋め」に設計・運用しなければならない事態に陥ります。

財源がないわけではなく、このまま本当に昇給してしまっていいのか、という先の読めない不安を経営陣が感じるようになるためです。

スタートアップの他社がどれくらいの昇給水準なのか、といった情報は簡単に手に入りませんし、変数が多すぎてその数字を信じるかどうかもわからない。

数字が一人歩きしている状態で、意思決定するのも怖い。

ズルズルと打ち手が遅れてしまうケースがあります。

 

話が少し横道にそれましたが、年収は相対比較のもとで決定されていきます。

このプロセスにおける特性を知っておくだけでも、質の高い意思決定につながり、成長に寄与する行動に帰結します。

言語化し、共通認識を持つことで大切です。

 

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