等級の中に「サブグレード」をつくってはいけない

自社の人事制度に「サブグレード」はありますか?

私は、サブグレードを導入に反対するスタンスを取っています。

    

 

サブグレードとは?

等級(グレード)を、さらに分割した等級をサブグレードと呼びます。

たとえば、7等級の等級制度を設計し、その等級に3段階のサブグレードを設計すると、7×3の21等級となります。

多くの場合、「21等級です」という説明はせず、「等級は、7つです。それぞれの等級を3つにわけてサブグレードを設定しています」と説明します。

 

サブグレードの目的は、報酬レンジが広い場合に、自分がどの辺りに位置づくのか、を直感的に認識できるようにすることです。

その結果、次の昇格が近いこと、同時に報酬レンジの上限に近く、このまま昇格しないと昇給も止まる可能性があることを認識できるようにしています。

また、その等級内では上位レベルになるので、難易度の高い目標を設定するよう促す場合もあります。

 

大企業では、サブグレードを使ってメリットインクリース方式の昇給を実施するケースもあります。

例えば、人事評価が同じであっても、サブグレードが高い人の昇給は月5,000円アップ、サブグレードが低い人の昇給は月10,000円アップとなります。

 

このサブグレードは、報酬レンジとして機能することはなく、あくまでも等級内での「目安」として活用されます。

 

サブグレードの序列に「納得感」はうまれにくい

私がこれまで見聞きしてきたスタートアップの人事制度で、このサブグレードは問題になりがちでした。

なぜなら、スタートアップの実態にそぐわないからです。

 

なお、以下の意見は、個人の等級とサブグレードが全社員に公開されている前提とします。

 

サブグレードを導入すると、サブグレードが高い方はサブグレードが低い方よりも報酬は高く、「能力も高い(期待役割も大きい)」というロジックになります。

つまり、「サブ」と言いながらも等級としての役割を果たしていることになるのです。

ここに落とし穴があります。

決して、そうならないのがスタートアップの組織づくりなのです。

 

スタートアップは、基本、中途採用です。

その年収、特にオファー時の年収は実力・実績を鑑みて決定しますが、多くの場合で前職の年収が考慮されます。

つまり、同じ等級の人材でも前職の報酬水準の影響を受けているということ。

その結果、サブグレードが高い方(年収が高い方)よりもサブグレードが低い方(年収水準が低い方)の方が能力水準が若干高いケースがあります。

 

原則としては、同じ等級なので同じ能力水準という説明になっていますが、上位等級に近い方と下位等級に近い方が同じ等級にいるケースがあり、サブグレードがこの能力水準を逆転させたような形で表出することになります。

 

スタートアップでは、この報酬の「誤差」を2-3年かけて調整していきます。

入社後の活躍を見て、主に昇格のタイミングでこの報酬の誤差を是正していくのです。

 

しかし、サブグレードが全社員に見えていると、「なんで、あの人の方が、サブグレードが上なの?」といった声が出ます。

採用が進み、100名程度の組織になってくるとこうした声が膨らみ、人事制度への不満や不信につながってきます。

 

すると、「サブグレードは公開しない方がいいのでは?」や「そもそも等級を公開しない方がいいでしょ」といった意見につながり、透明性の欠けた人事制度へと発展することになります。

ほぼ、この流れでサブグレードを加味した人事制度が問題化していきます。

 

サブグレードは公開しなければいいのか?

サブグレードを公開しないという判断をしても、こうした情報は自然と漏れていき、公開していないけど知っている状態という気持ち悪さにつながります。

 

また、サブグレードは、そもそも「何のためにサブグレードがあるんですか?」という質問を受け続けます。

そのたびに、上記の目的を説明し、その後、「なんでサブグレードは非公開なんですか?」と続き、さらに説明する運びになります。

 

このやり取りが現場の評価者に対して起きると、「サブグレードの説明コストが重い」というクレームにつながっていきます。

人事でも同じようなことが起こります。

 

多くの場合、ここで飛躍が起きます。

「人事制度って、ない方がいいのでは?」と。

この気持ちを持ちながら、人事制度を運用すると本当に制度が悪者に見えてきます。

 

このタイミングで、私は相談を受けることが多いです。

なので、「サブグレードって、難しいですよね。」という雑談から始まります。

 

もちろん知恵をこらした工夫でサブグレードをうまく活用できているケースもありますが、スタートアップではシンプルな制度が一番。

そのことを考えると、サブグレードを敢えて導入する必要はないかもしれません。

 

なので、自分はサブグレードに反対するスタンスを明確に取っています。

 

Share this…