この方程式を、まさに今現場で感じています。
捨てる決断:2-1=3
伊丹敬之さんの『経営学とはなにか』を読みました。
人事コンサルとして、伊丹さんの本は昔から大変参考にさせていただき、理論を現場で実践できた感覚がありました。
久しぶりの伊丹本で色々と記憶が蘇ってくるところがあり、ゾクゾクしました。
その中でも、この話は良かった。
「2-1=3」を「捨てる決断」として語っています。
元ネタは松井証券の松井道夫さんと書いてありました。
その本質を引用します。
ふつうの算数の答えとしてはまちがっている。しかし、人間の心理や波及効果を考えると正しい方程式になる。
捨てる決断をすると、現状の2から1をマイナスする(つまりなにかを捨てる)ことによって、そこにまずは穴が埋まれる。しかし、その後に、その穴をべつのなにかで埋めようと懸命に考える人が出てくる。あるいは、そういう人をつくる。さらには、1をマイナスしたことによってそれが邪魔していた別なものが表へ出てくることもある。いずれも、マイナスするプロセスからなにかが生まれることを意味している。
伊丹敬之著『経営学とはなにか』P338より
こうやって言語化されると引き算の経営というワードが、スッと入ってくる気がします。
1+1=3 は腹落ちしなかった
方程式の話として、1+1=3 みたいなことを聞くことがあります。
チームやシナジーの文脈で語られますが、どうも自分はこの内容がスッと入ってきませんでした。
「1+1=2 でしょ」と、どうしても思ってしまうのです。
チームやシナジーの文脈で言わんとしていることは分かるのですが、どうも個をスコープにした方程式ゆえ、夢物語にように感じてしまうところがありました。
一方、捨てる決断は、「個」ではなく「戦略」の文脈なので腹落ちできました。
本当に、捨てるプロセスで人・組織の葛藤があり、業績、戦略、リソース、感情、肩書といった要素が絡み合ってカオスになります。
粘り強く向き合うことで、本質的な問題に気づき、それでも捨てる決断に躊躇し、議論が続く。
ここで経営者(経営陣)が逃げずに意思決定できるか。
つまり、逃げずに捨てる決断ができるか。
捨てることで、強みを研ぎ澄ませば、「強み」となって現れます。
2+1=1 になっていないか
本の中では「2+1=1になってしまう」との言及もあります。
ロジックは本は任せるとして、本当にそうなっているケースを見ます。
特にスタートアップでは、限られたリソースで戦うしかありません。
「選択と集中」ではありません。
「集中」です。
「選択」に時間を取られてはいけません。
スタートアップにおいて手数を増やせば、可能性が拡がるというのは錯覚です。
もし、それを実現するなら、起業家(経営者)であるリーダーが複数名、必要です。
リーダーがいない中で、戦に挑んでも勝ち目はありません。
まずは、「1+1=2」ではなく、「1」に集中して「2」に進化させましょう。
そこから「捨てる決断」です。
その結果が「3」へと繋がっていきます。